ビニル基とは?性質と反応、メカニズムについて徹底解説

ビニル基は、二重結合で連結した2つの炭素原子と3つの水素原子から成る化学基です。このビニル基を持つ化学物質は、反応性が高く、ポリマー化しやすい性質があります。ビニル基を持つポリマーはプラスチック樹脂の原料として、私達の生活に欠かせません。本記事ではビニル基について構造、性質、反応メカニズムまで解説します。

目次

ビニル基とは

化学物質はそれぞれ特徴的な官能基を持っており、今回解説するビニル基も、特徴的な官能基を持つ物質の一つです。ビニル基はIUPAC命名法でエテニル (ethenyl)基と言い、ビニル基という呼称は慣用名です。

このビニル基の構造は、二重結合で連結した2つの炭素原子(C)と3つの水素原子(H)から構成されています。代表的なビニル基を持つ化学物質には、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられます。

またビニル基を持つ化学物質の多くは、付加重合してポリマーになります。

ビニル基を持つ化合物

ビニル基を持つ化学物質には、エチレン、プロピレン、アクリルアルデヒド(アクロレイン)、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニルなどがあります。

ビニル基を持つ化学物質の用途

例えば、代表的なビニル基を持つ化学物質、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニルについて解説します。

これらはいずれもポリマー原料です。それぞれの原料がポリマー化すると、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルが得られます。代表的なビニル基を持つ化学物質の用途と、ビニル基を持つ化学物質を原料とする樹脂の用途は、次のとおりです。

ビニル基を持つ物質ポリマー用途
塩化ビニルポリ塩化ビニル上下水管のパイプ、建築資材、ビニールハウス素材
スチレンポリスチレン建材ボード、耐熱性食品容器、食品トレー
酢酸ビニルポリ酢酸ビニル接着剤、塗料、フィルム、チューインガム原料

ビニル基の構造

ビニル基の構造は次のとおりです。二重結合で連結した2つの炭素原子(C)と3つの水素原子(H)が特徴です。

ビニル基の性質

ビニル基の特徴を一言で説明すると高い反応性です。高い反応性は、2つの炭素が結合する二重結合が要因です。この二重結合状の電子はsp2混成軌道上に存在します。

1つの炭素当たり4つの結合手を持ちますが、そのうち炭素同士が結合しているビニル基の二重結合はσ(シグマ)結合とπ(パイ)結合です。π(パイ)結合の軌道上にある電子は反応性が高く、求電子剤の攻撃を容易に受けます。

ビニル基の反応メカニズム

ビニル基を持つスチレンがポリマー化していく反応メカニズムは、次のとおりです(赤点は不対不対電子)。

まず、スチレン(A)はラジカル反応を誘発するラジカル開始剤(R-)と反応し、もう一方の炭素がラジカル化して他のスチレンに求核攻撃を行います。

その結果、ラジカル化したスチレンは別のスチレンを求め(B)、連鎖的にスチレンの反応が進行するのです(D)。このように、ラジカル開始剤が刺激となって連鎖的に反応が進みポリマー化が進行することをラジカル重合といいます。

ビニル基を持つ物資を製造しているメーカー

ビニル基を持つ有機化合物を製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途で、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
日本触媒エチレンオキサイド
DIC株式会社スチレンモノマー
三菱ケミカル株式会社アクリル酸

まとめ

本記事では、2つの炭素原子と3つの水素原子から成るビニル基について解説しました。ビニル基の二重結合は反応性が高く、ポリマー化しやすい特徴があります。

この官能基を持つ化学物質には、エチレン、プロピレン、アクリルアルデヒド、アクリル酸、アクリル酸メチルなどがあります。通常、ポリマーの原料として使用され、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルの原料になります。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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