インクとは何か? インキとの違い、歴史、種類、成分までを徹底解説

インクとは、被印刷物の表面に文字や図柄を描くときに使用される液状、固体状の物質を指します。インキに含有する色材によって、意匠性に富んださまざまなデザインの文字や図柄を描くことができます。印刷面の美しさのみならず、耐色性や手移りしないなどの特性が求められます。本記事ではインクについて歴史、種類、成分まで解説します。

目次

インクとは?インキとの違いがあるのか

インクとは、紙やプラスチックなどの表面(被印刷物)に文字や図柄を書いたり印刷したりするときに用いられる、液体もしくは固体の物質を指します。

ボールペンや油性ペンなどの筆記用と、家庭用プリンターや商業印刷機用として使われ、それぞれ成分や特性が異なります。

インクに似た言葉にインキがありますが、インクとインキは語源が異なるだけで、同じものを指しています。「インク」は英語、「インキ」の語源はオランダ語です。印刷業界では慣例的に、インキと呼ぶことが主流となっています。

インクが人類に使われ始めた頃はいつか

インクが人類で初めて使用された時期は諸説ありますが、現代のインクに相当するものは、紀元前4000年代の終わり頃から使用され始めたと言われています(参照)。

当時文字を書くために使用されていた物質は、にかわと樹脂に木炭や煤煙(ばいえん)を混合した墨です。その後、古代の中国では甲骨(亀の甲羅)に墨書や朱墨の痕跡が発見されています。

また、古代ローマでは、セピアというイカの分泌物(イカ墨)を原料にした黒色インクが使用され、エジプトでは、万年筆のように手を汚さなくても字が書ける筆記用具用のインクが発明されました。

そして近年になり、ドイツのヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を実用化することで、印刷用のインクが発展しました。
参照:日本大百科全書(ニッポニカ)インキの説明を元に作成

インクにはどんな種類があるのか

印刷に使用されているインクは、おおよそ8種類に分類されます。その理由は被印刷物、印刷方法、印刷機械、印刷後の加工の有無によって、使用するインクが異なるからです。

以下に各インクの種類とその説明についてまとめます(インクの種類を表現するときは、印刷業界の慣例に合わせて「インキ」を使用しています)。

インクの種類説明
オフセットインキ平版インキともいい、書籍、パンフレット、カタログなど一般的な印刷に使用されます。オフセットインキは油性で、ビヒクル、色材、添加剤から構成されています。
凸版インキ新聞、帳票、段ボールなどの印刷に使用されます。凹凸のある版面の凸の部分にインクをのせ、被印刷物にインキを転写させます。凸版インキは油性で、ビヒクル、色材、添加剤から構成されています。
フレキソインキ主に段ボールの表面印刷に使用されます。上述の凸版印刷方式の一種です。フレキソインキには水系、溶剤系、無溶剤系があり、段ボールに使用される水系のフレキソインキは環境負荷が低いとされています。
新聞インキ新聞インキはオフセットインキに分類され、主に新聞の印刷に使用されています。油性でビヒクル、色材、添加材から構成されています。近年、環境意識の高まりから、鉱物油からよりも植物油に切り替わってきています。
スクリーンインキスクリーン印刷とは、版支持板としてメッシュを使用し、メッシュ上の版画像を通してインキを被印刷物に転写して印刷する方法です。スクリーンインキは着色剤、樹脂、補助剤、溶剤から構成されています。
UVインキ食品や医薬品の紙箱への印刷には、UVインキが使用されています。UVインキは、色材と樹脂、UVモノマーが配合されていており、紫外線によって硬化してインキ被膜が形成されます。
インクジェットプリンター用インキ家庭のプリンターやオンデマンド型の商業印刷機として普及しているのが、インクジェットプリンターです。インクジェット印刷方式は、液体のインクがノズルから急速に発射し、被印刷物に噴射されて印字されます。インクジェット用プリンターインクは、主に水溶性で、着色剤、界面活性剤、pH調整剤などから構成されています。
レーザープリンター用インキレーザープリンターも、家庭のプリンターやオンデマンド型の商業印刷機に使用されています。レーザープリンター用インキは、トナーと呼ばれる粉末状のパウダーが主成分です。トナーは、高分子樹脂、ワックス、顔料で構成されています。

インクの成分について

印刷インクの代表例であるオフセットインクの成分は、大きく分けて色材、ビヒクル(ワニスとも呼ぶ)、添加剤に分けられます。色材は色の素になる色素や染料です。

ビヒクルとは、色材を包み込むと同時に非印刷物と色材を互いに吸着させて剥がれないようにする働きを持ちます。なお、添加剤は、印刷の仕上がりを改善したり、インク自体の保存性や作業性を改善したりするために微量配合されます。

オフセットインキの組成

大分類中分類小分類
色材顔料有機顔料
無機顔料
    染料
ビヒクル樹脂天然樹脂
天然加工樹脂
合成樹脂
植物油乾性油
半乾性油
溶剤ナフテン
パラフィン
アロマ
     ゲル化剤
添加剤消泡剤
粘度指数調整剤
乾燥抑制剤
粘度調整剤
分散剤
乳化調整剤
汚れ防止剤
ワックス
裏移り防止剤
参照:色材、70[2]、132-142(1997)印刷インキ基礎講座 オフセットインキを元に作成

まとめ

本記事では、インクについて解説しました。インクは、被印刷物に文字や図柄を転写する際に使用される液状もしくは固体状の物質です。

約4,000年前の墨にその原型が認められ、近年ドイツのヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を実用化することで、印刷用のインクが世に一気に広まりました。

一般的に使用されオフセットインキは、色材、ビヒクル、添加剤から構成されています。その他、印刷インキには、凹版インキ、スクリーンインキ、UVインキなどがあります。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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