曲げ弾性率とは? 弾性率、応用例、縦横弾性率、測定方法を徹底解説

曲げ弾性率とは、曲げ方向に荷重を掛けたときの応力とひずみの比を意味します。曲げ弾性率は、身の回りの材料の強度や耐久性を評価するときに、重要な指標となります。プラスチック製品や建築物などは、曲げ弾性率を含む機械的強度を元に設計が決まります。本記事では、曲げ弾性率について弾性率、応用例、縦横弾性率、測定方法について詳しく解説します。

目次

曲げ弾性率とは

曲げ弾性率とは、材料に加えられた荷重に対する変形のしにくさを意味します。材料の強度を知る方法のひとつで、機械的性質の指標です。

材料の強さには「剛性」「靭性」「硬度」などがありますが、曲げ弾性は掛けた力に対する剛性、つまり、ひずみやすさの尺度です。曲げ弾性率は数値が大きいほどひずみにくく、小さいほど容易にひずみます。

弾性率とは

弾性率は、材料に荷重をかけたときのひずみと荷重に対する応力の比を意味します。ひずみが小さい範囲においてはひずみと応力は比例し、荷重を取り除くと可逆的にひずみが戻ります(=フックの法則)。

このひずみと応力が比例している状態が「弾性」です。ただし、荷重をかけ続け、ある一定値を超えると材料は耐えきれなくなり破壊されます。この段階で、比例関係は崩れます。荷重のかけ方に対するひずみの評価にはさまざまあります。

例えば、材質が曲げ方向に荷重されたときの曲げ弾性率、荷重を掛けたときの体積のひずみを体積弾性率、縦方向に力を荷重したときのひずみを縦弾性率(=ヤング率)、横方向に力を荷重したときのひずみを横弾性率(ずれ弾性率、剛性率とも言う)です。

縦弾性率、横弾性率、曲げ弾性率の違い

材料に縦方向に引っ張る力を掛けると、縦方向にひずみが生じます。このとき、縦方向の応力とひずみの比が縦弾性率(=ヤング率)です。

一方、材料が引っ張られたとき、同時に横方向にもひずみが生じます。この横方向のひずみと応力の比を横弾性率といいます。また曲げ弾性率とは、材料を横から材料に荷重を掛けたときのひずみを意味します。

縦弾性率、横弾性率は材料固有の値になるのに対し、曲げ弾性率は材料の断面の形状などが影響するのです。3つの特性値、いずれも荷重が掛かったときのひずみ間には比例関係があります。それぞれの傾きが弾性率です。

曲げ弾性率の応用例

曲げ弾性率は、材料の強度設計や性能評価、耐久性の確認などに応用されます。

例えば、国立研究開発法人土木研究所は「舗装コンクリートの曲げ試験による弾性係数に関する一検討」という報告書の中で、コンクリートと使用骨材との曲げ弾性係数の詳細な分析を行っています。

同様の応用例は、素材であるプラスチック、金属、セラミック、木材、紙などの材料においてもさまざまな角度から比較検討されています。このように曲げ弾性率は、製品の強度や耐久性を見積もるうえで重要な指標を与えるのです。

さらにプラスチック樹脂の分野では、加工しやすさにも曲げ弾性率が重要です。例えば、射出成形や押し出し成形での加工しやすさに影響します。また工業的生産において製品の品質を保証するため、品質保証規格項目にも採用されています。

参考:国立研究開発法人土木研究所 舗装コンクリートの曲げ試験による弾性係数に関する一検討

曲げ弾性率の測定方法

曲げ弾性率は、測定試料の両端を固定し中央上部より荷重を加えて測定します。

例えば日本産業規格JIS K7171、JIS K7017では、割線法による曲げ弾性率の測定方法と計算式が規定されています。曲げ弾性率は、荷重−たわみ曲線あるいは応力−ひずみ曲線を描き出し、歪み区間(0.05%、0.25%)の応力勾配を計算することで得られます。

ε1:たわみ(区間0.05%)、ε2:たわみ(区間0.25%)
σ1:たわみ区間0.05%の応力 、σ2:たわみ区間0.25%の応力

曲げ弾性率E=σ2-σ1/(ε1-ε2)

規定された2点のひずみε1(0.05%)とε2(0.25%)に対応する応力σ1とσ2それぞれの差の比が曲げ弾性率(E)

まとめ

本記事では、材料のひずみを表す曲げ弾性率について解説しました。

曲げ弾性率は「剛性」「靭性」「硬度」の中でも「しなやかさ」に相当する剛度の程度を表したものです。掛けた荷重を取り除くと元に戻る性質を弾性と呼び、応力とひずみにはフックの法則が適用されます。

プラスチックや金属などでできた製品は、曲げ弾性率を評価しながら選ばれた素材で構成されており、一定のスペック以上の製品強度や耐久性を担保するため、重要な指標を与えるのです。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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