引張強度とは? 降伏点、試験方法、さまざまな素材の引張強度について徹底解説

引張強度は、材質における引張荷重に対する応力やひずみを計測し、どのくらいの強度があるかを数値化したパラメーターです。コンクリートや皮製品など、強度が求められる素材の開発に使用され、高品質な製品を安定して生産する指標となります。本記事では、引張強度について降伏点、試験方法、さまざまな素材の引張強度について解説します。

目次

引張強度とは

引張強度は、材料の強度を示すパラメーターのひとつです。引張強度は最大引張荷重を断面積で除すると得られ、次の関係式で表されます。

TB=FB/A
{TB:引張強度(MPa)、FB:最大引張荷重(N)、A:試験片材料の断面積(mm2)}

引張強度は、引張試験と呼ばれる実験方法で測定されます。しかし、材料の強度はこの試験のみ単独で評価されることはなく、他の機械的強度特性と併用して総合的に判断されます。

引張強度の利用場面

引張強度の測定対象は、金属、コンクリート、プラスチック、ゴム、繊維などです。引張強度を測定する目的はおもに3つ考えられます。

1つ目は新たな素材開発のため、2つ目は工業的に生産するときに一定の品質を保証するため、3つ目は不良品や顧客からのクレームの原因解析のためです。

引張強度と降伏点

引張強度の測定時、引張荷重の強度を徐々に上げていくとある所で急激に変形します。この急激に変形が大きくなった荷重値が「降伏点」です。

降伏点は、鉄や軟鋼などの炭素鋼で頻繁に観察されます。降伏点の前での材料の荷重に対するひずみは、連続的で可逆的(荷重を止めると元に戻る)ですが、降伏点後の材料は変形したまま元の形状に戻りません。

引張強度の試験方法

引張強度の試験方法は、素材によって複数の標準試験方法が定められています。

例えば、織物生地や布帛(ふはく)の引張強度を計測する試験は、JIS L 1096 A法で細かく定められています(※1)。また、JIS Z 2241:2022(※2)には、金属材料の引張試験方法が定められています。

ただ、引張試験の方法は材料ごとに適した方法を選ばないと正確な値が得られません。従って、実際に引張試験を計画するときは、専門の検査会社に相談してみることが重要です。

※1参照:一般財団法人カケンテストセンター 引張強さ試験(JIS L 1096)
※2参照:JIS Z 2241:2022

各種材料の引張強度

次表は、代表的な材料の引張強度です。

材質引張強度(MPa)
塩化ビニル(※3)41~52(硬質)
塩化ビニル(※3)11~25(軟質)
ポリスチレン(※3)36~52
ABS樹脂(※3)23~55
ポリエチレン(※3)23~31(高密度)
ポリプロピレン(※3)31~41(非強化)
黄銅100
ステンレス350
鉄鋼400~800(車用)
※3参照:プラスチック読本 第22版
※4参照:科学技術振興機構(JST)、広島大学 鉄鋼のように強い汎用プラスチックの創製

引張強度と共に計測される機械的強度特性

引張試験を計測すると同時に、さまざまな強度に関わるパラメーターが得られます。例えば、弾性率、比例限度、破断点、ポアソン比、縦弾性係数(ヤング率)などです。なお、次表が各パラメーターの説明です。

パラメーター説明
弾性率引張荷重を付加しているときにひずみがどの程度弾性的に反応するかを示す物理量。 すなわち、荷重が取り除かれたときに元の形状に戻る最大の荷重値のこと
比例限度引張荷重に対する応力とひずみが比例しているときの最大の荷重値のこと。ばねの伸び縮みを説明する際に用いられるフックの法則があてはめられる
破断点引張荷重を加え続けるとやがて応力は減少して材料は破断する。 この破断した点を破断点 といい、そのときの応力を破断応力という
ポアソン比引張荷重を付加したときに縦方向と横方向に発生するひずみの比のこと
ヤング率縦弾性係数ともいい、材質を縦方向に引っ張ったときの応力とひずみの関係のこと。ひずみが小さい範囲では引張荷重とひずみは比例関係にありフックの法則が適用できる

まとめ

本記事では、材質の強度を測定するパラメーター、引張強度について解説しました。引張強度とは素材に引張荷重をかけ、その応力の傾向を評価する強度を数値化したものです。引張強度は、最大引張荷重を断面積で乗じると得られます。

よく見られるのが金属やコンクリート、布などの製品の開発、品質保証、クレームの原因解明の場面です。引張強度は、素材によって細かくJISなどによる標準的な試験方法が定められています。素材に適した測定方法があるので、事前にどの測定法が適切か検討が必要です。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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