誘電率とは? 電気がたまる誘電体、誘電メカニズム、測定法など徹底解説

誘導率とは、物質の電気のため込みやすさの程度を意味します。また、電場の中で電気が流れずため込む性質をもつ物質を誘電体といいます。

誘電率は、数ある条件から最適の誘電・絶縁特性を有する物質を探索するときに利用されます。特に電子部品のコンデンサや、絶縁被膜などの性能評価に多く用いられます。本記事では、誘電率について測定方法や熱物性値まで詳しく解説します。

目次

誘電率とは

誘電率は、電極の間に挟まれた物質の分極のしやすさを数値で表したものです。ギリシャ文字のε(イプシロン)で表され、単位は、[F/m](ファラド毎メートル)です。

真空の誘電率との比を比誘電率と呼び、誘電体の種類によって異なります。実用では、コンデンサや絶縁体材料の性能評価に使われます。

誘電率は、高ければ高いほどコンデンサ材料として適しており、逆に低ければ低いほど絶縁体材料として適しています。

誘電体とは

まず、プラスチックや電線の被覆に使われる塩化ビニル樹脂のように、直流の電気を通さない素材を絶縁体、金属のように電気を通す素材を導体と言います。

そして、直流の電気を通さないが交流電流の電場で分極し、電気をため込む性質のある物質を誘電体と言います。電子回路のコンデンサを例に図に示すと次のようになります。

図に示したような分極が生じることで、コンデンサに電気が蓄えられます。分極の程度は物質ごとに異なります。そこで重要となるのが誘電率です。

誘電体と主な素材の誘電率

直流電流を通さない絶縁体でも、交流電流を流すことで誘電体になります。

例えば、酸化アルミニウムや酸化タンタルはそれぞれアルミ電解コンデンサ、タンタルコンデンサに使用される誘電体です。他にもチタン酸バリウム、ポリプロピレン、マイカなども誘電体としてコンデンサに使用されます。

素材コンデンサの種類特徴比誘電率※
酸化アルミニウムアルミ電解コンデンサ安価でコンデンサの容量が大きい8~10
酸化タンタルタンタルコンデンサ現在セラミックコンデンサに切り替わっている23~27
チタン酸バリウムセラミックコンデンサ小型で容量が大きく、バリエーションが豊富5~500(種類1.)200~100,000(種類2.)
ポリプロピレンフィルムコンデンサ性能バランスがよく機械、電子機器の回路でよく使用されている2.1~2.2
マイカマイカコンデンサ耐熱性、経年劣化がない6~8
紙(セルロース)紙コンデンサシリコン油、鉱物油などを含浸させ金属箔と交互に重ねる。絶縁抵抗が高い3.5~65.5
参照:エーアイシーテック株式会社 コンデンサ特性の基礎知識 ~静電容量~

誘電メカニズム

誘電は大きく分けて「電子分極」「イオン分極」「配向分極」「空間電荷分極」により発現します。それぞれの発現メカニズムは次のとおりです。

誘電メカニズム発現メカニズム
電子分極原子や電子の位置が電気の流れで発生した電場に影響されてずれることで生じる
イオン分極イオンが電気の流れで発生した電場によってずれることで生じる
配向分極双極子をもつ分子(分子内で正と負の電荷の中心に偏りがある分子)が電気の流れで発生した電場により回転して生じる
空間電荷分極イオンが物質内で大きく移動し分布を変えることで生じる

誘電率の測定方法

誘電率の測定方法には幾つかの手法があります。代表的な測定法としては「集中定数法」「反射伝送法(S パラメータ法)」「共振法」が知られています。表にまとめると次のとおりです。

誘電率の測定方法説明
集中定数法測定試料を電極で挟んでコンデンサを形成し、キャパシタンスとコンダクタンスを測定して誘電率を得る方法
反射伝送法(S パラメータ法)伝送線路に測定試料を設置し、電磁波をかけることでその反射特性や透過特性から誘電特性を評価する方法
共振法励振線を通じて共振器に電磁波を入射し、共振器内に特定共振器内に特定の電磁界モードを励振させて2つの励振線の間の透過量から評価する方法
参照:産総研計量標準報告 Vol.9, No.1
「誘電率等材料定数の測定技術と標準供給に関する調査研究」を元に作成

まとめ

本記事では、物質の分極のしやすさを数値で表した誘電率について解説しました。

誘電率は、電気をため込む性質(分極)の程度を数値によって定量的に表した値です。また誘電率の測定対象は誘電体と呼ばれ、交流電流により電気をため込む性質のある物質を意味します。

誘電率は、物質内の電子やイオンの配置、分子内の電気的配向性、物質内で電子が移動して分極することにより発生します。この誘電率は、電子部品のコンデンサや絶縁被膜などの性能評価に使用されます。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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