ポリエーテルスルホンとは?特徴、用途、構造、反応、メーカーまで徹底解説

ポリエーテルスルホンは、芳香族ポリエーテルケトンの一種です。スルホン基の両側にベンゼン環が結合したポリエーテル型高分子です。その卓越した性能からスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれ、高い品質が求められる用途に適しています。本記事では、ポリエーテルスルホンについて解説します。

目次

ポリエーテルスルホンとは

ポリエーテルスルホンは略してPES樹脂(あるいはPESU樹脂)と呼ばれ、イギリスのImperial Chemical Industries社(以下ICI社と表記)※によって開発された素材です。

現在、住友化学株式会社がICI社から技術ライセンスを取得し、単独で国内製造をしています。ポリエーテルスルホンは、透明〜やや黄褐色を帯びた無臭のプラスチックであり、安全性も高く、米国や欧州の食品包装材料の安全規制にも準拠しています。

※ICI社(Imperial Chemical Industries(ICI社)は現在、Akzo Nobel N.V.の傘下)

ポリエーテルスルホンの特徴

ポリエーテルスルホンの特徴は高い耐熱性、耐薬品性、耐候性です。熱可塑性があり、寸法安定性も良いので精密成形が可能です。そのため、スーパーエンジニアリングプラスチックとして主に産業、工業用機器に使用されています。

ポリエーテルスルホンの用途

ポリエーテルスルホンは電気・電子、自動車部品、産業用機械部品、医療器具、食品加工機器、航空機など高性能な条件が要求される工業用品に使用されています。

加えて、軽量化、高い耐久性、着色やデザイン加工のしやすさなどの特徴からメガネメーカーが着目し、メガネフレームとして使用されています。さらに、高い安全性と耐熱性から、哺乳瓶にも使用されています。

ポリエーテルスルホンの特徴用途
高い耐熱性、耐薬品性、耐候性電気・電子、自動車部品、産業用機械部品、医療器具、食品加工機器、航空機
軽量化、高い耐久性、着色やデザイン加工のしやすさメガネフレーム
安全性と耐熱性哺乳瓶

ポリエーテルスルホンの構造

ポリエーテルスルホンは、スルホン基の両側にベンゼン環が結合したポリエーテル型高分子です。低温でも分子同士の相互作用が弱く、結晶構造をもたない非晶性樹脂に分類されます。非晶性樹脂の特徴は、高い透明性と寸法安定性です。

ポリエーテルスルホンの反応

ポリエーテルスルホンのジヒドロキシジフェニルスルホン(Bis-S)と4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)の反応を次に示します。

ポリエーテルスルホンの製造方法

ポリエーテルスルホンの製造方法は、次のとおりです。

まず、ジヒドロキシジフェニルスルホン(Bis-S)と4,4′-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を触媒である炭酸カリウムの存在下、高沸点溶媒に投入します。

次に240〜300℃の範囲で重合反応を行い、反応終了後に溶媒除去を行います。この過程で得られたポリエーテルスルホンには、副生した塩が混ざっているので取り除く操作が必要です。

そこで重合直後のポリエーテルスルホンを水洗いし、不純物である塩(主に塩化カリウム)を除去します。

ポリエーテルスルホンの反応メカニズム

ポリエーテルスルホンの反応の過程で、重要な働きを担うのが、触媒である炭酸カルシウムです。

炭酸カルシウムは、アルカリ性のため溶媒中でアルカリ雰囲気を作ります。その結果、アニオン重合反応が進行する環境が成立します。

そして、4,4′-ジクロロジフェニルスルホンとビスフェノールAが塩化カリウムを副生しながら重合し、ポリエーテルスフホンを生成するのです。

ポリエーテルスルホンのメーカー

ポリエーテルスルホンを製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途で、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
住友化学株式会社スミカエクセルpes
BASFジャパン株式会社ウルトラゾーン®

まとめ

ポリエーテルスルホンとは、ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)とジヒドロキシジフェニルスルホン(Bis-S)が重合して得られたポリマーのことを指します。ポリエーテルスルホンは、卓越した耐熱性、耐薬品性、耐候性からスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれています。これらの特徴を利用し、電気・電子、自動車部品、産業用機械部品、医療器具、航空機など高性能な条件が要求される用途で使用されています。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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