本記事では地球地下奥深くから地表に出現した「鉱物」について解説します。鉱物とは、地表の下、深くで生成した無機物や有機物の総称です。石油や石炭、磁鉄鉱や赤鉄鉱、銅らん・銅鉱、ギブス石などがあります。
鉱物はエネルギー変換されたり生活必需品に利用されたりして私たちの生活を豊かにしてくれています。今回は、分類、基本構造、用途、歴史、社会的課題、鉱業メーカーについて紹介します。
鉱物とは
徳島県立博物館のホームページによると、鉱物は「地球の地殻や惑星をつくる天然の均一な無機質の固体のこと」と定義されています。鉱物は主にオーストラリア、ブラジル、南アフリカ、コンゴ及びその周辺、中国、中東地域、アメリカ大陸などから産出されます。私達が豊かに生活できるのは、これら鉱物を加工した日用品のおかげです。
参照:徳島県立博物館 鉱物とは
鉱物の分類
鉱物は、その化学組成から「金属鉱物」と「非金属鉱物」に分類されます。
前者は磁鉄鉱や赤鉄鉱(鉄の原料)、らん銅鉱(銅の原料)、ギブス石(アルミニウムの原料)、後者は原油、石炭、アスファルト、石英、マイカ、石綿(アスベスト)などが挙げられます。
鉱物の基本構造
例えば金属鉱物である磁鉄鉱や赤鉄鉱は酸化鉄(それぞれFe3O4、 Fe2O3)、らん銅鉱は炭酸銅(Cu3(CO3)2(OH)2)、ギブス石は水酸化アルミニウム(Al(OH)3)として存在しています。
非金属鉱物である石油は炭化水素を主成分としてさまざまな有機物が油状になったものであり、石炭は炭素分の豊富な可燃性の有機物が岩石状になったものです。
また石英は、二酸化ケイ素 (SiO2)の結晶が基本的な構造です。例として、Fe3O4の結晶構造を以下に示します。
鉱物の用途
金属鉱物の代表として磁鉄鉱や赤鉄鉱は主にオーストラリアで産出され、日本に鉄鉱石として輸入されます。日本では製鉄会社が鉄鉱石から鉄(Fe)を取り出し、鉄はさまざまな製品や建造物の骨格として利用されます。
また非金属鉱物である原油はタンカーで日本に輸入され、石油製油所でガソリン、灯油、軽油、重油などに分留してエネルギーとして使用されたり、ナフサからプラスチックなどに加工されたりしています。
鉱物の歴史
金属鉱物の歴史は古く、人類が初めて青銅器の道具や武器を使用したのは紀元前4,000年~3,500年前のメソポタミア文明が最初と言われています(参照先1)。
また、カマン・カレホユック遺跡では世界最古の鉄器が発見され、人類の歴史上、鉄が使用され始めたのは紀元前2,250〜2,500年頃と推定されています(参照先2)。
日本において発見された最古の青銅器は山形県三崎山遺跡の青銅刀子(せいどうとうす)で、日本の歴史上、銅が使用され始めたのは縄文時代と推察されています(参照先3)。
そして非鉄鉱物である石炭は、18世紀半ばから19世紀にかけて石炭をエネルギーに変換する蒸気機関が発明されたことにより、工業化が一気に進み人類が著しく発展しました。後に石炭はより熱効率が高く液状で使用しやすい石油に置き換わり、今日の文明が築かれることになりました。
参照先1:小学館 日本大百科全書 青銅器時代
参照先2:アナトリア考古学研究所 カマン・カレホユック
参照先3:NPO法人遊佐鳥海観光協会 青銅刀子(せいどうとうす)
紛争鉱物について
鉱物のなかでもコンゴ民主共和国やその周辺で産出するスズ、タンタル、タングステン、金はその販売で得られた資金が武装勢力に流れ、欧米を中心に倫理上の大きな問題になっています。
なぜなら武装勢力は資金を利用して勢力を拡大し、一般住民の虐殺や私刑、拉致、性的暴行、奴隷化等の非人道的な行為を行なっているからです。
この問題に対し、米国やEUを中心にこれらの鉱物を「紛争地域で採掘された鉱物でない」ことを条件に市場に流通させる措置を取っています。
企業においてもスズ、タンタル、タングステン、金を調達する際には、そのトレーサビリティをしっかり確認し、適正なサプライチェーンを通じて入手されたかどうかを把握しておく必要があります。
参照:一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)責任ある鉱物調達
岩石と鉱石との違い
岩石とは、地球表層の地殻と上部マントル及び地表を構成する固体物質です。岩石は大きく分けて火成岩、堆積岩、変成岩に大別されます。
他方、鉱物とは岩石の一部をなす固体物質です。岩石中に鉱物が含まれています。特定の原子で構成され純粋で規則正しい結晶構造を示すものや、石油や天然ガスなどがあります。
実は鉱物は法律により種類が決まっており、約40種類が挙げられています。ちなみに鉱石とは、鉱物の中でも人間の役に立つ(商業的価値のある)固体物質で、鉄や金、銀、銅、石英などがあります。
参照:鉱業法第三条
まとめ
鉱物は地球の地下奥深くで長い時間をかけて生成した化学物質です。その化学組成から「金属鉱物」と「非金属鉱物」に分類され、様々に加工されて私達の生活になくてはならない物となっています。
鉄や銅に代表される金属鉱物は、日常品や建造物に活用されていますし、非金属鉱物の代表である石油や石炭はエネルギー源やプラスチックの原料として私たちの生活になくてはならないものとなっています。
他方、コンゴ民主共和国やその周辺で産出されるスズ、タンタル、タングステン、金は武装勢力の資金源になっているので、トレーサビリティの強化により調達先をしっかり調査しておくことが重要です。
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代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。