ブタジエンゴムは、スチレンブタジエンゴムと並んで市場に多く流通している合成ゴムの一種で、ブタジエンの重合により製造されます。弾力性に富み、低温特性、耐摩耗性に優れることから、主に乗り物用タイヤやゴルフボール、ゴムホースなどに使われます。本記事では、ブタジエンゴムについて用途、構造、反応、製造メーカーまで解説します。
ブタジエンゴムとは
ブタジエンゴムとは、ブタジエンを重合したポリマーのことを指します。
BRという略号で呼ばれ、汎用合成ゴムに分類されます。ブタジエンには幾種類かの異性体が存在しますが、ブタジエンゴムに使用されるブタジエンは、直鎖の炭素4つの中に1位と3位に二重結合を持つ1.3-ブタジエンです。
類似の機能を持つスチレンブタジエンゴム(SBR)は、1.3-ブタジエンとスチレンを共重合させた合成ゴムのことを指します。
ブタジエンゴムの特徴
ブタジエンゴムの特徴は弾力性、耐摩耗性、耐老化性と加工性です。また、低温でも特性の変化が少ない低温特性や摩擦により、発熱しにくい低発熱性も示します。
ただ、各種ゴムの中では強度がやや低いため、単品で使用されるよりSBRなど他のゴムと混合して使用されるのが一般的です。
ブタジエンゴムの用途
ブタジエンゴムは、弾力性、耐摩耗性そして耐老化性などの特徴により、自動車、航空機用タイヤ、シューズ、建築用防振材、ロール、ゴムベルト、ホースなど日用品から工業用品まで幅広く使用されています。
対象物質 | 特徴 | 特徴を利用した用途例 |
ブタジエンゴム | 弾力性耐摩耗性耐老化性 | 自動車、航空機用 タイヤ、シューズ、建築用防振材、ロール、ゴムベ ルト、ホース |
ブタジエンゴムの構造
ブタジエンゴムの化学構造は、下の図の右側です。
なお、左側の化学物質は1.3-ブタジエンです。この物質の重合により、ブタジエンゴムが得られます。
重合後のブタジエンゴムは3種類の異性体構造の混合物です。3種類の異性体構造のうち、割合が高いのは、シス型とトランス型、そして数〜10パーセント程のビニル型です。それぞれの型が発生する反応について続けて解説します。
ブタジエンゴムの反応
ブタジエンゴムの原料である1.3-ブタジエンには、1位と4位の位置に二重結合があります。重合する際、1位と4位の炭素は隣の1.3-ブタジエンの1位と4位の炭素と反応します。
その結果、現れるのは3種類の幾何異性体です。次の図は、連結の仕方によって表れるシス型とトランス型、そしてビニル型の構造です。
一般にシス型の割合の多いブタジエンゴムの方が弾性や強度に優れ、タイヤなどに加工されて市場に多く流通しています。
ブタジエンゴムの製造方法
ブタジエンゴムの製造方法は各社さまざまありますが、基本的に次の順で製造されます。
・1.3-ブタジエンを有機溶媒に希釈
・触媒や重合開始剤を添加して重合反応を開始
・未反応の1.3-ブタジエンと有機溶媒を除去
シス型とトランス型の割合は、使用する触媒や重合開始剤によって制御が可能です。
高いシス型割合のブタジエンゴムを製造する場合は触媒にZiegler系を使用し、高いトランス型割合のブタジエンゴムを製造する場合は重合開始剤に有機リチウム化合物を使用します。
ブタジエンゴムの反応メカニズム
ブタジエンゴムの重合反応メカニズムは、1.3-ブタジエンの1位と3位の二重結合を形成するπ電子が隣の1.3-ブタジエンの1位と4位の炭素と結合してσ結合に変化することで連結します。このとき、2位と3位の炭素にπ結合が残ります。
ブタジエンゴムのメーカー
ブタジエンゴムを製造している主な国内メーカーは次のとおりです。さまざまな用途で、さまざまなグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。
まとめ
本記事では、1.3-ブタジエンを重合したポリマーであるブタジエンについて詳しく解説しました。ブタジエンゴムは、シス型、トランス型、ビニル型が存在し、製造時に触媒や重合開始剤を適切に選ぶことで割合を制御することができます。
一般的にはシス型の割合の多いブタジエンゴムが市場によく流通しています。ブタジエンゴムの高い弾力性や耐摩擦性を利用して、自動車、航空機用タイヤのような高性能が必要な分野から日用品まで幅広く使用されています。
株式会社CrowdChemが公開した「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」では、”ブタジエンゴムにカテゴライズされる製品のカタログ情報” や “その製品と紐づいた特許情報” を含む、化学分野に関する知見や知識を提供しています。一部は無料でご利用いただけますのでぜひご活用ください。
代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。