ポリエチレンオキシドとは?性状、用途、構造、反応などを徹底解説

ポリエチレンオキシドは、エチレンオキサイド(酸化エチレン)が重合したポリマーです。水に可溶で安全性が高く、主な使用先は医療、化粧品、食品、工業用途です。また親水基を構成する一部分として、界面活性剤の構造中に頻繁に見られます。本記事では、ポリエチレンオキシドについて性状、用途、構造、反応、反応メカニズムについて解説します。

目次

ポリエチレンオキシドとは

ポリエチレンオキシドは、エチレンオキサイド(酸化エチレン)の酸素(O)の部分が開環して重合したポリマーです。

ポリオキシアルキレングループに属し、アルキル炭素の数や構造に応じてポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどがあります。

また、エチレンオキサイドの重合度により呼び方が異なり、450モル程度より少ないものはポリエチレングリコール、450モルより多いものはポリエチレンオキシドと呼ばれます。

ポリエチレンオキシドの性状

ポリエチレンオキシドは、エチレンオキシドの付加モル数により性状が異なります。分子量と凝固点、外観の相関は次のとおりです。

平均分子量エチレンオキサイドの平均付加モル数凝固点
(℃)
外観
2004.5<-35無色液状
60013.621無色液状
100022.737白色ワックス状
1,45032.945白色ワックス状
3,40077.359白色フレーク状
20,000454.560白色フレーク状
参照:三洋化成 ポリエチレングリコールPEGシリーズの主要ラインアップを参考に作成

ポリエチレンオキシドの用途

ポリエチレンオキシドの用途は多岐にわたります。ポリエチレンオキシドは、乳化、分散、保湿、粘度調整、可塑化、帯電防止など様々な機能を発現します。

また、ポリエチレンオキシドのこれらの機能は、化粧品や医薬品、産業用途に利用されています。

さらに分子中にポリエチレンオキシドを含む物質は、界面活性剤の化学構造の一部によく見られます。例えば、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルやポリエチレンオキシドアルキルエーテル硫酸塩は、分子内にポリエチレンオキシドが含まれる洗浄剤です。

対象物質用途例
ポリエチレンオキシド化粧品、医薬品、産業用途
ポリエチレンオキシドを含む物質界面活性(ポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル硫酸塩)

ポリエチレンオキシドの構造

ポリエチレンオキシドのユニット構造は次のとおりです。下図の一番右にある酸素原子が別のユニットの炭素と結合するので、ポリマー構造としては酸素(O)が間に二つの炭素(C)を挿み込むパターンが繰り返されます。

  

ポリエチレンオキシドの反応

ポリエチレンオキシドの原料であるエチレンオキサイドの酸素原子は、隣接する2つの炭素を橋渡しするように結合しています。この酸素は反応性が高くポリマー化する時の起点になり、ポリエチレンオキシドが生成します。

ポリエチレンオキシドの反応メカニズム

ポリエチレンオキシドの反応は、酸化エチレンを水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基性触媒の共存下、オートクレープ(高圧反応釜)で150℃前後に保持すると進行します。また、発熱を伴うので冷却しながら行います。

ポリエチレンオキシドの原料であるエチレンオキシドは、可燃性の高圧ガスです(高圧ガス保安法)。常温で気体(沸点10℃)のため高圧で液化させ、そのまま反応層でポリマー化させます。

以上の理由から、ポリエチレンオキシドの製造には、安全上の観点からオートクレープを使用する必要があります。

ポリエチレンオキシドを持つ物資を製造しているメーカー

ポリエチレンオキシドを持つ有機化合物を製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途で、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
日本触媒エチレンオキサイド
三洋化成PEGシリーズ
青木油脂工業株式会社ポリエチレングリコール

まとめ

本記事ではエチレンオキサイド(酸化エチレン)が重合したポリエチレンオキシドについて解説しました。

ポリエチレンオキシドの反応は、塩基性触媒の共存下、高温・高圧で進行します。このポリエチレンオキシドは化粧品や医薬品、産業用途分野でよく使用されます。

また、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル硫酸塩のように界面活性剤の一部としても利用されています。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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