動摩擦係数とは? 静止摩擦係数、応用例、原理、測定方法まで徹底解説

摩擦係数とは、面の上に置かれた物体を押した力とその場に留まろうとする力の比を意味します。動摩擦係数は物体の移動中、静止摩擦係数は静止している間の値です。ブレーキペダルを踏めば自動車が止まるように、動摩擦係数を利用し、安全設計を備えた製品は多くあります。本記事では動摩擦係数について静止摩擦係数との違い、応用例、原理、測定方法を解説します。

目次

動摩擦係数とは

面の上に置かれている物体を押す時、押す力(F)を接触面に作用する垂直方向の垂直抗力で除した値を摩擦係数(μ)と言い、次の関係が成り立ちます。

μ=F/N

摩擦力は押す力に対抗する反作用であり、押す力と反対方向に働きます。

特に動摩擦係数とは、押す力により物体が動いている状態の摩擦係数を意味します。動摩擦係数は、物体が移動する速さにかかわらず不変です。これをクーロンの法則といいます。

静止摩擦係数との違い

物体が動いている時の摩擦力を動摩擦力と呼ぶのに対し、物体が動き始めるまでの摩擦力は静止摩擦力です。

動摩擦力も静止摩擦力も押す力を除けば、それぞれ動摩擦係数、静止摩擦係数が得られます。静止摩擦係数と動摩擦係数の間には、次の関係が成り立ちます。

静止摩擦係数(μ1)>動摩擦係数(μ2)

物体を押す力を徐々に大きくしていく場合、動き出すまでの力は静止摩擦力と釣り合います。言い換えると物体が動き出すまで、静止摩擦力は押す力と同じだけ反対向きに作用します。


静止摩擦力のイメージ

物体が動き出す直前の静止摩擦力は、最大静止摩擦力(最大摩擦力)と言います。

他方、物体が動いている間の動摩擦力を動摩擦力といいます。押す力と動摩擦力は同じ値を示し、物体が動いている間は変化せずに一定です。


動摩擦力のイメージ

動摩擦係数の応用例

動摩擦係数を利用した実用品で代表的なものは、自動車のブレーキです。

自動車の運転中にブレーキを踏み込むと、ブレーキパッドがタイヤと同じ回転をしているディスクローターという板との間に動摩擦力が発生し、タイヤの回転が遅くなります。

ブレーキパッドとディスクローターの動摩擦係数が大きすぎると急激にブレーキがかかりやすくなり、小さすぎるとブレーキのかかりが悪くなります。

また、地面との滑りを抑制する靴底も動摩擦係数の値が重要です。快適で安全な素材や表面形状を選ぶ際に、動摩擦係数は重要な物性値です。

動摩擦力の原理

動摩擦力は、押す力に対抗する反作用です。反作用が生じる原因は、物体とそれに接触する面(接触面)で発生する主に3つの力の影響です。

1つ目は、物体と接触面の分子や原子のvanderWaals力、2つ目は金属結合、イオン結合、水素結合、共有結合による固体-固体接触面の相互作用(どの相互作用が大きく影響するかは物質や接触面の素材によって異なります)、3つ目は物体と接触面が接する面の環境です。

1つ目vanderWaals力と2つ目の固体-固体接触面の相互作用は、物質と接触面の素材によって、ほぼ決まります。しかし3つ目の物体と接触面が接する面の環境は、接触面の物理的な形状や汚れ、表面の粗さにより大きく変化します。

動摩擦係数が静止摩擦係数より小さな値を示す理由は、物体が移動している時の方が物体との接触面の面積が小さくなるからと説明されています(出典)。

出典:R.Holm:Electric Contactts, Gebers, Stockholm, 1946

動摩擦係数の測定方法

動摩擦係数、静止摩擦係数を測定する代表的な手法は、負荷電力を測定する方法と振動減衰を測定する方法です。負荷電力する方法は水平な場所に物体を設置し、駆動モーターで引っ張って計測します。

また、振動減衰を測定する方法は、水平な場所に物体を設置し摩擦が発生した時に生じる振動減衰を測定します。さらに、斜面上に物体を設置し、滑り落ちる角度から計算する方法は傾斜法と呼びます。


摩擦係数の測定(傾斜法)

まとめ

本記事では、摩擦係数の中でも物体が移動している時に観測される動摩擦係数について解説しました。動摩擦係数は、面の上に置かれた物体の押す力と留まろうとする力の比で表されます。

また、物体が留まっている時に認められる静止摩擦係数より小さくなります。動摩擦係数は、自動車のブレーキや地面との滑りを抑制する靴底などの設計に利用されています。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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