ジシアンジアミドとは?興味深い特徴、構造、性質、用途を徹底解説

ジシアンジアミドは、その機能から農業用から工業用まで幅広く使用されています。特に、ジシアンジアミドの土壌で有害物質の生成を防ぐ働きは、農作物の育成を助けています。

今回は、ジシアンジアミドの構造、性質、反応メカニズムについて解説します。

目次

ジシアンジアミドとは

ジシアンジアミドは、シアナミド(CN2CH2)が2個重合した構造を持つ含窒素系化学物質です。2-シアノグアニジン(IUPAC命名法)、ジシアノジアミド、DCDなどとも呼ばれます。

ジシアンジアミドの常温固体での結晶の構造は、斜方晶系結晶または板状結晶です。また、ジシアンジアミドは化学的に不安定で、融点付近で容易に分解します。

ジシアンジアミドの用途

ジシアンジアミドの用途は、多岐に渡ります。

例えば、農業分野における用途では、肥料や農薬殺菌剤が挙げられます。工業分野における用途は、接着剤、エポキシ樹脂の硬化剤、粉体塗料、澱粉糊添加剤などです。

さらに、メラミン樹脂の原料であるシアナミド誘導体の原料としても使用されています。

分野用途
農業分野肥料、農薬殺菌剤
工業分野エポキシ樹脂の硬化剤、粉体塗料、澱粉糊添加剤
化学原料分野シアナミド誘導体の原料

ジシアンジアミドの構造

ジシアンジアミドの構造は、次のとおりです。

ジシアンジアミドは溶媒中において、3種類の互変異性体※1を形成します。下図は、3種類のジシアンジアミドの互変異性体の構造です。プロトン(-H)の存在する場所により、それぞれ化学構造が変化する様子が分かります。中央の構造は、双性イオン※2として存在しています。

※1. 互変異性:異性体同士が素早く変化しうる化学構造を互変異性という。通常、どの異性体も共存する平衡状態にあり、その割合は、pH、温度、溶媒の環境などで変化する。

※2. 双性イオン:同じ分子中にプラスとマイナスの電荷をもつイオンが存在すること。

ジシアンジアミドの性質

ジシアンジアミドは白色の結晶です。水やジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどには良好な溶解性を示します。

他方、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、エタノールなどには溶けません。また、ジシアンジアミドは207〜210℃あたりに融点をもち、融点以上に加熱するとメラニンを生じ、さらに加熱することでアンモニアやメラムを生成します。

このアンモニアやメラムは刺激性があり、皮膚に触れると炎症を起こすので取扱いには注意が必要です。

ジシアンジアミドの反応

ジシアンジアミドが生成するまでの流れを図で表すと次のとおりです。

水に石灰窒素(カルシウムシアナミド:CaCN2)を溶解しpHを下げる(酸性にする)とシアナミドが発生します。このシアナド溶液を加熱すると反応が進行し、ジシアンジアミドが生成します。

ジシアンジアミドの反応メカニズム

ジシアンジアミドがエポキシ樹脂の硬化剤として働くときは、ジシアンジアミドのアミノ基、もしくはイミノ基が重要な役割を担います。

なぜなら、アミノ基とイミノ基が互異構造をとる過程で活性水素が発生するからです。発生した活性水素は、エポキシ基と反応します。これが、エポキシ樹脂を生成するメカニズムです。

また、ジシアンジアミドが肥料として働くときは、土壌細菌(ニトロソモナス)の働きを借りながら進行します。土壌細菌はジシアンジアミドの影響を受け、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への分解を緩やかにします。

その結果、土壌中で作物に害となる亜硝酸塩の生成を防ぐのです。

ジシアンジアミドを製造しているメーカー

ジシアンジアミドをもつ有機化合物を製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途で、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
日本カーバイド工業株式会社ジシアンジアミド
キシダ化学株式会社ジシアンジアミド

まとめ

本記事ではシアナミドが2個重合した構造を持つ含窒素系化学物質、ジシアンジアミドについて解説しました。農業分野から工業分野まで様々な用途に使用されていますが、主な用途は、肥料やエポキシ樹脂の硬化剤です。

ジシアンジアミドは溶解すると、互変異性を示す特徴があります。また刺激性があり、皮膚に触れると炎症を起こすので取扱いには注意が必要です。

このようにシアナミドは、日常生活で目に触れることはないですが、農業や工業分野では重要な化学物質です。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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