ポリエーテルアミンは、ポリエーテルの末端がアミノ化された物質の総称です。本記事では、自動車エンジンの内燃機関に溜まった煤の清浄などに高い効果を示すポリエーテルアミンについて解説します。用途、構造、物性、製造法、清浄メカニズム、メーカーについて紹介します。
ポリエーテルアミンとは
ポリエーテルアミンは、主に自動車のエンジン内部に蓄積した煤(すす=炭素の堆積物)の清浄に使用されるアミン化合物です。
無色〜淡黄色の液体でガソリンに溶解させて通常通りエンジンを稼働させることで、煤を取り除きながら煤と共にポリエーテルアミン自身も燃焼して無くなります。
ポリエーテルアミンの用途
前述した通り、ポリエーテルアミンの用途は、主に自動車の内燃機関の清浄剤です。その他、一部はエポキシ樹脂の硬化剤や建築用接着剤、コーティング剤、重防食塗料、塗料のpH調整剤、樹脂改質などにも使用されています。
ポリエーテルアミンの構造
ポリエーテルアミンは、ポリアルキルオキシエーテルの両末端がアミノ化した化学構造を有しています。
ポリエーテル部分は、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレン、さらにはポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンがブロック(もしくはランダム)に連結した構造から成ります。
エチレンオキシドやプロピレンオキシド、ブチレンオキシドの付加モル数によってポリエーテルアミンの分子量をさまざまにコントロールできます。
ポリアミンの化学構造(Poly(propylene glycol) bis(2-aminopropyl ether)) |
ポリエーテルアミンの物性
ポリエーテルアミンの代表的な物理化学的物性について、次の表にまとめました。
C3H8N(C3H6O)nNH2 | C3H8N(C3H6O)nNH2 | C12H21{C3H6O}n(NH2)3 | |
分子量 | 230(n=2~3) | 400(n=5~6) | 2,000(n=30~31) |
外観 | 無色または黄色液体 | 無色または黄色液体 | 無色または黄色液体 |
融点(℃) | <-60℃ | <-40℃ | -29℃ |
沸点(℃) | >200℃ | >200℃ | >250℃ |
引火点(℃) | 128℃ | 128℃ | 234℃ |
発火点(℃) | 230℃ | 235℃ | 230℃ |
比重 | 0.95g/cm³(23℃) | 0.97g/cm³(23℃) | 1.00g/cm³(23℃) |
ポリエーテルアミンの製造法
ポリエーテルアミンの製造法は、以下の通りです。
最初にプロピレングリコールやグリセリンを開始剤アルコールとしてアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)を重合付加させてポリエーテルを得ます。
次に、上記のポリエーテルを高温・高圧下でアミノ化し、ポリエーテルアミンを得ます。
近年新たな製造方法として、アルコキシル化アルコールを開始剤として固体高融点ポリオールを混合し、アミノ化触媒及びアンモニアの存在下で還元的にアミノ化して、ポリエーテルアミンを得る製造方法も特許化されています(参照先)。
参照先:【公報種別】特許公報(B2)、【特許番号】6843770
ポリエーテルアミンの清浄メカニズム
ポリエーテルアミンが最も使用されている分野は自動車の内燃機関の清浄です。
自動車はエンジン(内燃機関)にガソリンが注入され、爆発的に燃焼することで動力を得ています。ガソリンが燃焼した時、不完全に燃焼すると煤(炭素の堆積物、デポジットとよばれる)が発生し、出力性能を低下させます。
そこで、ポリエーテルアミンをガソリンに添加することでポリエーテルアミンが煤をエンジン内部の煤を吸気ポート、吸気弁、シリンダヘッド、ピストンなどから剥離させ、再度燃焼室にガソリンとともに注入されて煤ともども燃焼します。
ポリエーテルアミンを製造しているメーカー
ポリエーテルアミンを製造している主な国内メーカーは次のとおりです。さまざまな用途に、さまざまなグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。
企業名 | 主な製品名 |
巴工業株式会社 | JEFFAMINE Mシリーズ |
三井化学ファイン株式会社 | ポリエーテルアミン類 |
日油株式会社 | ナイミーン® |
まとめ
ポリエーテルアミンは、ポリアルキルオキシエーテルの両末端がアミノ化した化学構造です。通常、ポリエーテルを高温・高圧下でアミノ化してポリエーテルアミンを製造します。主に自動車のエンジン内部の清浄に使用されます。
ポリエーテルアミンは、エンジン内部に付着した煤を再度燃焼室にガソリンととも燃焼させてエンジン内部を清浄します。その他、エポキシ樹脂の硬化剤や建築用接着剤などにも使用されています。
株式会社CrowdChemが公開した「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」では、”ポリエーテルアミンにカテゴライズされる製品のカタログ情報” や “その製品と紐づいた特許情報” を含む、化学分野に関する知見や知識を提供しています。一部は無料でご利用いただけますのでぜひご活用ください。
代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。