ウレタン樹脂は生活に不可欠!種類、用途、構造、毒性、反応まで解説

ウレタン樹脂は、複数のイソシアネート基と水酸基を有する物質が反応するポリマーです。本記事では工業用品から日用品まで、生活に不可欠なウレタン樹脂について解説します。その種類、用途、毒性、構造、反応メカニズム、メーカーについての紹介を通し、ウレタン樹脂について紹介します。

目次

ウレタン樹脂とは

ウレタン樹脂とはウレタン結合をもつ重合体の総称になります。ウレタン結合とは、イソシアネート基と水酸基が反応してできた結合です。この部分が鎖状に連なってポリマー化したのがウレタン樹脂です。


ウレタン結合

ウレタン樹脂は、1937年にドイツの Otto Bayer らによって世界で初めて実用化手法が開発され※1、特許化されました※2。その後1959年に米国のデュポン社で製品化され、1963年日本において米国企業とのタイアップによってウレタン樹脂の生産が始まりました。

※1 「ネットワークポリマー論文集」Vol. 39 No. 1(2018)
※2 ドイツ特許第728981号(1937年11月13日)

ウレタン樹脂の種類

ウレタン樹脂には、大きく分けて非フォーム型とフォーム型があります。さらに非フォーム型はウレタンエラストマー、繊維状ポリウレタン、人造皮革に分類されます。また、フォーム型は軟質、半硬質、硬質の三種類に分類できます。

ウレタン樹脂の用途

ウレタン樹脂は、日用品から精密機器まであらゆる用途に使用されています。ウレタン樹脂のそれぞれの分類ごとに用途をまとめました。

分類用途
非フォーム型ウレタンエラストマー工業、自動車、日用雑貨
繊維状ポリウレタンスポーツウエア、カジュアルウエア、ストレッチジーンズなど
人造皮革衣料、家具、インテリア、靴、鞄など
フォーム型軟質自動車の座席用クッション、二輪サドル、空調用フィルタ、ソファー、カーペット裏打ち、食品梱包材、靴、肩パット、水耕栽培用資材
半硬質衝撃吸収材、自動車のインストルメントパネル・ヘッドレスト
硬質冷蔵庫などの断熱材、建材、救命艇の浮力材

ウレタン樹脂の毒性

ウレタン樹脂の原料であるイソシアネートは人体に対して毒性が強く、皮膚、粘膜の損傷、神経系への刺激性があります。ただ、ウレタン結合したウレタン樹脂から原料のイソシアネートが遊離することはなく、ウレタン樹脂そのものは安全とされています(参照先)。

参照先:ウレタンフォーム工業会 よくある質問

ウレタン樹脂の構造

イソシアネート基と水酸基を有する分子の組み合わせで、さまざまな化学構造のウレタン樹脂が得られます。

例えば、イソシアネート基を有する原料としてトリレジンジイソシアネート(TDI)、4.4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、水酸基を有する原料としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオールなどを組み合わせてさまざまなウレタン樹脂を得ます。

ウレタン樹脂の基本立体構造は、ソフト部位とハード部位からできています。ソフト部位には水酸基を有するポリオールが非晶構造を形成している部位であり、ウレタン樹脂の柔軟性がここで発現します。

他方、ハード部位はウレタン結合が結晶構造を形成している部位であり、強靭性や耐熱性などの性質を与えます。


ウレタン樹脂の内部構造

ウレタン樹脂の反応メカニズム

ウレタン樹脂原料であるイソシアネート基と水酸基の反応メカニズムは、次に示した付加重合反応です。

O=C=N-R1-N=C=O+HO-R2-OH→(-CO-NH-R1-NH-CO-O-R2-O-)n

R-N=C=Oで表されるイソシアネートの炭素原子(C)は、酸素原子(O)と窒素原子(N)にはさまれ、常に電子不足です。電子が不足した炭素原子(C)は、ヒドロキシ基(-OH)の攻撃を受けやすく、求核反応を誘引します。

この付加重合反応自体は、反応性が高く加温や触媒を必要としません。ただ、実際のウレタン樹脂の製造は、加温したり有機金属などの触媒を使用したりします。

ウレタン樹脂を製造しているメーカー

ウレタン樹脂を製造している主な国内メーカーは、次のとおりです。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
荒川化学工業株式会社ユリアーノUシリーズ
UBE株式会社ETERNACOLL®UWシリーズ
DIC株式会社バーノック
株式会社トクシキaup-838

まとめ

ウレタン樹脂とはウレタン結合をもつ重合体の総称です。複数のイソシアネート基と水酸基を有する物質が反応してポリマー化した化学構造が特徴です。ウレタン樹脂は日用品から精密機器まであらゆる用途に使用されています。

原料であるイソシアネートは、人体に対して毒性が強いことが指摘されていますが、樹脂化すれば毒性は認められていません。ウレタン樹脂の立体構造は、ソフト部位とハード部位から出来ており、柔軟性、強靭性や耐熱性がここから発現します。

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