チオールの臭いの謎に迫る!特徴、物性から反応メカニズムまでを解説

チオールは、分子の末端にチオール基(-SH)を有する物質の総称です。メルカプタンともいわれ、特異的な臭いを放ちます。スカンクやドリアンの臭いの原因はこのチオール基を有する物質です。今回はチオールについて特徴、物性、用途、構造、反応メカニズムについて紹介します。

目次

チオールとは

チオールとは、分子の末端にチオール基(-SH)を有する物質の総称です。

必須アミノ酸であるメチオニンや通常のアミノ酸システインなどには、硫黄原子が含まれており、たんぱく質の腐敗によってチオール基を有する物質が発生します。

この時に発生する悪臭は、人が誤って腐敗した物を口にしないように生体防御機能が働き、不快に感じさせるものという説があります。

チオールの特徴

チオールを特徴づけている化学構造は、チオール基(-SH)があることです。

硫黄原子(S)を含むチオール基は、人の嗅覚に作用しやすく悪臭を放ちます。また、チオール基の水素原子(-H)は同じ炭素数のアルコール(-OH)の水素より水中でイオン化しやすい性質があり、弱酸性を示します。

一般に有機溶媒には溶けやすく、水に溶けにくい性質があります。アルカリ水溶液に溶けると重金属塩と容易に反応し、不溶性の金属塩(メルカプチド)を生成します。

チオールの物性

代表的なチオール基を有する物理物性を表に示します。

エタンチオールtert-ブチルチオールベンゼンチオール
性状液体液体液体
融点(℃)-144.4 (101.3 kPa)0 (101.3 kPa)-15(101.3 kPa)
沸点(℃)34 (100.9 kPa)64 (101.3 kPa)169.1—
比重(g/cm³)0.839 (20 °C)0.8 (20 °C)1.08 (20 °C)
水溶解性(g/L)8.86  20 °C and pH 7.41.47 20 °C and pH 7
出典:ECHA(欧州化学品庁) 

同じ炭素数と立体構造を有するアルコールとの比較(つまり-SHと-OHの違いだけの比較)において、-SH(チオール)の方が、-OHより水素結合力が弱く沸点が低くなります。

チオールの用途

チオールの中でもエタンチオールやtert-ブチルチオールは、人がガス漏れに気付きやすいよう都市ガスやプロパンガスに意図的に微量添加されます。

このように特異臭を利用して人の嗅覚を刺激する剤を付臭剤といいます。また、エポキシ樹脂などのプラスチックを合成するときに硬化剤として使用されます。

チオールの製法

チオールの工業的製法には、①ハロゲン化アルキルに硫化水素ナトリウムなどのアルカリ硫化物を反応させる方法、②脂肪族アルコールと硫化水素との反応、③不飽和炭化水素(オレフィン)と硫化水素を反応させる方法があります。

R-Cl+NaSH→RSH+NaCl
①ハロゲン化アルキルと硫化水素ナトリウムを反応させて製造
R-OH+H2S→RSH+H2O
②脂肪族アルコールと硫化水素を反応させて製造
R-CH=CH2+H2S→RCH2-CH2-SH
③不飽和炭化水素(オレフィン)と硫化水素を反応させて製造

チオールの構造

代表的なチオールの化学構造を下図に示します。

エタンチオール
tert-ブチルチオール
ベンゼンチオール

チオールの反応メカニズム

チオール基の硫黄原子(S)には一対の孤立電子対(ローンペア)を持ちます。この孤立電子対は、プロトン性溶媒中においてSN2型の求核反応を起こします。

例えば、アルキルチオール(R1-SH)は、R2-Brのようなハロゲン化アルキルと反応しスルフィドR1-S-R2を生成します。

CH3CH2-SOH+CH3CH2-Br→CH3CH2-S-SH2-CH3

チオールを製造しているメーカー

チオールを製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
SC有機化学株式会社BMPA、TMMPなど
川口化学工業株式会社メルカプタン類

まとめ

チオール基(-SH)を有する化学物質の総称をチオールといいます。チオールは、チオール基(-SH)が原因で人が不快に感じる悪臭を放ちます。

また、一般的にチオールは、水に溶けづらく有機溶剤にはよく溶けます。都市ガスやプロパンガスに添加し、人がガス漏れに気が付きやすいようにする付臭剤や、プラスチックを合成するときの硬化剤として使用されます。

チオール基の硫黄原子(S)の孤立電子対は、求核分子とSN2型の求核反応を起こします。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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