ポリスチレン(PS)とは?特徴や用途をわかりやすく解説!

私たちの身の周りにはさまざまな種類のプラスチックがありますが、代表的なものは約100種類存在します。その中でも、私たちの日常生活でよく使われるのは約30種類ほどと言われています。本記事では、特に広く使用されている「ポリスチレン」というプラスチックに焦点を当て、その特徴や用途について説明します。

目次

ポリスチレン(PS)とは?

ポリスチレンは、石油を原料として作られる代表的なプラスチックのひとつです。このプラスチックは80年以上も前から私たちの生活を支えており、PS(ピーエス)と略されて表示されることもあります。

ポリスチレンの歴史

ポリスチレンは1839年にドイツの化学者エドワード・シモン(Edward Simon 1789-1856 独)が発明しました。その後、1930年頃にドイツ、1937年頃にアメリカで工業化が行われましたが、日本で工業化が行われたのは1950年代後半です。

当時は日本だけで製造することができず、日本化成(のちの三菱ケミカル)とモンサントとのJV(ジョイントベンチャーの略。共同企業体)により、技術的サポートを得ながら生産していました。

ただ、汎用樹脂としての市場の確立を機に近年業界の再編成が進み、現在国内のメーカーは、PSジャパン、東洋スチレン、DICの3社のみとなっています。 参照:日本スチレン工業会:ポリスチレンの需要と供給

ポリスチレンの特徴​​​​​​​

ポリスチレンは加工が容易で、形状の再現性が高いため、幅広い用途に利用されています。電気製品、日用品、食品容器などでよく見かけますが、注意点として、長時間にわたる高温には弱い点が挙げられます。

汎用ポリスチレン(GPPS)は透明で硬い性質があり、一方でゴムを加えることで衝撃に強さを持たせた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は乳白色をしています。それぞれのポリスチレンの特徴を表にまとめると、次のとおりです。

特徴
汎用ポリスチレン(GPPS)・透明で硬い・電気が通りにくい・水中に沈む
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)・乳白色・衝撃に強い・変形しづらいため形状を保ちやすい
物理特性単位汎用ポリスチレン(GPPS)耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)
比重1.04〜1.051.03〜1.06
引張強さMPa36〜521343
破断時伸び%1.2〜2.520〜65
引張弾性率MPa2,300〜3,3001,100〜2,600
圧縮強さMPa82〜89
曲げ強さMPa69〜10123〜69
衝撃強さJ/m19〜2451〜374
ロックウェル硬度M60〜75R50〜82,L60
出典:プラスチック読本 第22版(大阪産業技術研究所プラスチック読本編集委員会)

ポリスチレンの構造

ポリスチレンの化学式は-(C8H8)n-で、ベンゼン環を含む炭素8個が鎖状に繋がった高分子です。スチレンモノマーを付加重合することで得られます。

主鎖を構成する炭素は不斉炭素原子であるためポリスチレンは立体異性体であり、ポリマーのフェニル基が同一方向に向いている構造をイソタクチック(アイソタクチック)ポリスチレン、ランダムに配列している構造をシンジオタクチックポリスチレンと呼びます。

ポリスチレンの反応メカニズム

ポリスチレンは、スチレンモノマーを付加重合して得られます。その反応メカニズムは、主にラジカル重合、アニオン重合です。

ラジカル重合とは、スチレンモノマーに高活性なラジカル開始剤を作用させ、光や熱によってラジカル反応を開始させてポリマー反応を促します。ラジカル開始剤には、ある種のアゾ化合物や過酸化ベンゾイルなどが使用されます。また、過度なポリマー化を防ぐため重合禁止剤を添加して求める分子量のポリスチレンを得ます。

他方、アニオン重合は、ブチルリチウム(BuLi)やナフタレンNa錯体のような求核性の強い開始剤をスチレンモノマーに作用させて重合を促します。たとえば、ブチルリチウムがスチレンに作用することでスチレンの生長鎖末端がアニオン化し、スチレンモノマーがポリマー化します。

ポリスチレンの長所と短所

続いて、ポリスチレンの長所と短所について解説します。

長所・透明(GPPS)・電気を通さない・好きなサイズや形状に変形できる・発泡しやすい・無味無臭
短所・熱への耐性が低い(一部は電子レンジで使用可能)・衝撃への耐性が低い(GPPS)・油、薬品を被ると壊れやすくなる

ポリスチレンの用途

ポリスチレン(PS)は、通常のプラスチックと、発泡ポリスチレンと呼ばれる発泡成形材料の2つの主要な種類に分けることができます。種類ごとの用途は次のとおりです。

~通常のポリスチレン(PS)~

用途
汎用ポリスチレン(GPPS)・透明なコンビニ弁当の容器・総菜ケース・コップ・CDケースなど、低コストで大量生産される商品に使用される
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)・工業用パーツが多い   (テレビや家電製品の内部パーツなど)・乳酸菌飲料などの食品容器

~発泡ポリスチレン~

用途
ビーズ法発泡スチロール(EPS)・梱包材(農産物、魚介類などを輸送するための箱など)・緩衝材・建材
ポリスチレンレンペーパー(PSP)・容器(食品トレーやカップラーメンなど)
押出ポリスチレン(XPS)・建築資材・住宅などの断熱材

ポリスチレン製造メーカー

最後に、ポリスチレンを製造する国内メーカーを紹介します。

メーカー名取扱い製品
大石産業株式会社スチロファン®、クリアファン®
東洋スチレン株式会社トーヨースチロールGP、トーヨースチロールHI
共栄樹脂株式会社キョーエイPSシート(PS)
PSジャパン株式会社PSJ-ポリスチレン GPPS

まとめ

この記事では、プラスチックの中でもポピュラーな種類であるポリスチレンの特徴や用途について解説しました。

ポリスチレンは、私たちの日常生活に欠かせない素材です。そのため、ポリスチレン市場は今後も伸び続けると考えられます。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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