【ポリイミドとは?】用途、種類、特徴、物性、メーカーについて解説

ポリイミドとは航空・宇宙から原子力、エネルギー、電子機器など幅広い分野に使用されている高分子化合物です。今回はポリイミドの用途、種類、特徴、物性など幅広く解説します。本記事を通し、ポリイミドの理解を深めましょう。

目次

ポリイミドとは

ポリイミドとはイミド環結合を含む高分子化合物の総称です。中でも芳香族化合物が直接イミド結合で連結した芳香族ポリイミドは、アメリカの化学会社DuPont社によって開発され、カプトン®というブランドで今でも宇宙航空分野や輸送車両、電気電子機器分野などで多用されています。

引用:東レ・デュポンホームページ カプトン®とは

ポリイミドの用途

ポリイミドは、高い耐熱性、絶縁性、低誘電率、低誘電損失、耐薬品性、耐放射線性などの特性を活かし、様々な用途に使用されています。例えば、電子機器においてはフレキシブルプリント基板、モーターコイル、電線、半導体素子の絶縁保護膜などです。またパソコンやテレビの液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、さらには半導体の製造装置や自動車機構部品なども使用されています。また、極めて高い品質が要求される宇宙開発において人工衛星等の絶縁保護フィルムとしても活用されています。

ポリイミドの種類

ポリイミドには幾つか種類があります。今回は、ポリイミドのもつ特性に着目し、非熱可塑性、熱可塑性、熱硬化性、可溶性ポリイミドについて解説します。

非熱可塑性ポリイミド

非熱可塑性ポリイミドは、一般的なポリイミドとして最も多量に生産されています。耐薬品性・耐熱性に優れ、フレキシブルプリント基板や自動車・航空機をはじめとする輸送機械の材料に使用されています。

熱可塑性ポリイミド

熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸ニ無水物と芳香族ジアミンをベースに熱的に安定な官能基を導入して製造されます。高いガラス転移温度と結晶性が特徴で、産業機器、原子力関連、航空宇宙関連など広い範囲で使用されています。

熱硬化性ポリイミド

熱硬化性ポリイミドは、低分子、低粘性のモノマーあるいは、前駆体ポリマーから合成されます。耐熱性と良好な加工性を有し、飛行機のエンジンや機体、産業機器、原子力関連、航空宇宙関連に使用されます。

可溶性ポリイミド

可溶性ポリイミドは、イミド環結合を含むポリマー骨格に嵩高い置換基、例えばベンゼン環やテトラカルボン酸、脂肪酸などを導入したポリイミドです。非結晶質になることで有機溶媒への可溶性が高まりフィルムなどへの加工性が改善します。非晶質になっても耐熱性はしっかり維持されています。

ポリイミドの特徴

ポリイミドの特徴は、高い耐熱性能、大きな温度の変化でも安定した電気特性、数百度にも及ぶ耐熱温度、高い熱伝導率、優れた難燃性にあります。また、あらゆる形状に加工しやすく様々な用途に展開できます。ただ透明性に欠点があり他の汎用樹脂と比べやや高価です。

ポリイミドの物性

代表的なポリイミドの化学特性を下記の表にまとめました。

物理化学的特性ポリイミド
透明性
比重1.36~1.43
引張強さ(MPa)73~118
破断時伸び(%)8.0~10.0
引張弾性率(MPa)2,100
圧縮強さ(MPa)207~276
曲げ強さ(MPa)131~198
衝撃強さ(J/m)E80
硬度
参照:「プラスチック読本」プラスチックス・エージ発行

ポリイミドを製造しているメーカー

ポリイミドを製造している主な国内メーカーは下記です。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
三菱ガス化学株式会社サープリム®、ネオプリム®など
東レ・デュポン株式会社カプトン®など
三井化学株式会社オーラム®など
株式会社カネカアピカル®、ピクシオ™

まとめ

ポリイミドは、高い耐熱性、絶縁性、低誘電率、低誘電損失、耐薬品性、耐放射線性などの特性を活かして様々な用途に使用されています。中でもアポロ計画の宇宙船用の耐熱素材として開発されたDuPont社のカプトン®は、ポリイミドでできた有名な製品です。他にも、フレキシブルプリント基板、モーターコイル、電線、半導体素子、液晶ディスプレイなど広範囲に活用されています。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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