エポキシ樹脂とは?種類と用途について徹底解説

本記事では、エポキシ樹脂について解説します。

用途や特徴、種類と幅広く紹介するため、本記事を読むだけでエポキシ樹脂の情報を網羅することができます。

目次

エポキシ樹脂とは

エポキシ樹脂はエンジニアリングプラスチック(強度や耐熱性に優れるプラスチック)の一種であり、加熱によって化学反応を起こして固化するタイプの樹脂です。

エポキシ樹脂の歴史

1930年に最初のビスフェノール型エポキシ樹脂が開発されました。工業用途として1948年頃に使用が始まって以降、接着剤や塗料として広く利用されております。現在もエレクトロニクス産業を中心に自動車産業や建築分野など多くの製品に使われています。(参照:エポキシ樹脂技術協会(Q1)

エポキシ樹脂の用途

エポキシ樹脂はさまざまな特長とメリットを持っているため、様々な用途に広く使われています。こちらでは、その代表的な用途についてご紹介します。

電子部品

電子部品の封止材には、優れた熱特性、電気絶縁性、機械特性などが必要です。電子部品の種類として、受動部品、LED、センサー、車載用電装部品などがあるため、封止材には成形の柔軟性も求められます。そこで、エポキシ樹脂を封止材として使用することで、これらの要件を満たすことができます。

半導体

半導体製品では、半導体チップと基板やリードフレームをボンディングワイヤで接合します。

この際、半導体チップやボンディングワイヤの損傷を防ぎ、デバイスの信頼性を向上させるために、樹脂による封止が行われます。封止に使われる樹脂は機械的強度、絶縁性、耐熱性、熱膨張率、半導体チップや基板との接着性など、多くの性能が求められます。

その中でも、エポキシ樹脂封止材は高い機械的強度と耐熱性が特徴であり、上記の要求を満たすことができるため、半導体の封止樹脂として広く使われています。

コーティング材

エポキシ樹脂は、密着性や耐水性、絶縁性などに優れているため、コーティング材としても広く利用されています。液状塗料と粉体塗料の2種類があり、使用する目的によって多種多様な塗装方法があります。

接着剤

エポキシ樹脂は、非常に強力な接着力と密着力を持っています。そのため、産業から日常生活まで広範囲にわたり、接着剤として広く利用されています。接着の強度は、エポキシ樹脂自体の特性だけでなく、硬化剤の種類や接着対象の材料によっても影響を受けるため、最適な組み合わせを選ぶことが重要です。

エポキシ樹脂の特徴:長所

エポキシ樹脂の長所は次の通りです:

1.多用性:分子量を調節することで、液体から固体まで様々な性質に変化することができる。

2.耐腐食性:水・酸素を通さないことで、腐食を予防してくれる。

3.接着性:木材、金属、コンクリート、ガラスなど、さまざまな素材を接着できる。

4.電気絶縁性:優れた電気絶縁性により、電気を通さない。

5.耐水性:水を通さない。

6.耐薬品性:化学薬品に対して強い耐性を示す。

7.耐熱性:高温環境での使用に適している。

8.耐候性:風雨、温度変化、太陽光などの影響で劣化や変質しにくい特性を持つ。

エポキシ樹脂の特徴:短所

エポキシ樹脂の短所は次の通りです:

1.靭性:粘り気が少ないため、外部からの圧力により破壊されやすい。

対処法としては、ポリウレタンなどを添加することで靭性を向上させることができる。 

2.紫外線に弱く、長時間の曝露で白く劣化することがある。

3.低温下では硬化が遅くなる傾向がある。

エポキシ樹脂の種類

エポキシ樹脂は分子量を調節することで、液体から固体まで様々な性質に変化します。この性質を利用することで、多岐に渡った用途に使用することができるのです。一般的には、プレポリマーと硬化剤を混ぜ合わせて製品化することが大半を占めますが、それらの組み合わせ方によって、結合剤や成形品、接着剤から塗料などさまざまな物性を作り出すことができます。

そこでこちらでは、9種類のエポキシ樹脂をご紹介していきます。

ビスフェノールA型エポキシ樹脂

エポキシ樹脂の種類の中でもっとも代表的なものはビスフェノールA型エポキシ樹脂です。

ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの分子量の比率によって異なる形態が得られます。

材料ビスフェノールA , エピクロルヒドリン
特性電気絶縁性 , 耐薬品性
用途成形品 , ガラス繊維強化材料 , 接着剤 , 塗料 , ポリ塩化ビニル(塩ビ)の可塑剤

ビスフェノールF型エポキシ樹脂

ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と同様にエポキシ基を得ることができます。

ビスフェノールA型エポキシ樹脂よりも
エポキシ含有量多い↑
粘度低い↓
硬化性ほとんど同じ≒
耐熱性やや低い↓
耐薬性やや向上↑

ノボラック型エポキシ樹脂

ビスフェノールと違い、ノボラックを用いて作られます。

材料ノボラック(フェノール樹脂(ベークライト)の原料で、フェノールノボラックと硬化剤エピクロルヒドリンが反応して作られる)
特性耐熱性 , 耐薬品性 , 電気特性
用途半導体封止材料(最も一般的) , 成形材料 , 塗料 , 積層板

フェノールノボラックの代用としてクレゾールノボラックを利用するとクレゾールノボラック型フェノール樹脂となります。

脂肪族型エポキシ樹脂

脂肪族型エポキシ樹脂は、脂肪族アルコールやポリオールのグリシジルによって形成される。

特性電気絶縁性 , 耐候性 , 耐熱性
用途他のエポキシ樹脂の粘度を修正・減少させる , 電気絶縁材 , ガラス繊維強化

グリシジルアミン型エポキシ樹脂

高官能エポキシ樹脂として知られています。

特性耐熱性 , 機械的特性
用途航空宇宙産業で使われる複合アプリケーションの重要な材料

多官能エポキシ樹脂

1分子あたりのエポキシ基の数が多いエポキシ樹脂です。

硬化物の特性耐熱性 , 耐薬品性

可撓性(かとうせい)エポキシ樹脂

特性耐熱衝撃性 , 可塑性 , 伸縮性

高分子型エポキシ樹脂

硬化した塗膜の特性機械加工ができる

ビフェニル型エポキシ樹脂

硬化物の特性耐熱性 , 低応力性

エポキシ樹脂の反応メカニズム

エポキシ樹脂は単独では反応せず、硬化剤や触媒と組み合わせて硬化させる必要があります。

エポキシ樹脂の反応は、エポキシ環(オキシラン環)の開環と同時に起こる付加重合や開環重合によって進行するため、反応後に副生成物が生成されることはありません。この時に得られる硬化物は、最終的に三次元の網目構造を持ち、不溶性で融点が高く、耐熱性の高い性質を持ちます。よく使われる硬化剤としては、酸無水物、アミン化合物、塩基性触媒やルイス酸触媒などが挙げられます。

それでは、エポキシ樹脂の代表的な硬化反応系を見ていきましょう。

エポキシ樹脂とアミン化合物の付加反応

エポキシ樹脂の硬化反応で最も一般的に使われる方法です。通常、常温で反応し、強くて接着性に優れた硬化物が生成されます。種類としては、脂環式ポリアミン、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミド、芳香族ポリアミンアミンなどがあり、使用する目的や硬化条件に合わせて使い分けることが大切です。

エポキシ樹脂と酸無水物の共重縮合反応

この反応を行うには加熱による硬化(100℃以上)が条件となりますが、酸無水物の粘度が低いことや、混合後のポットライフが長いことにより扱いやすいです。反応により得られる硬化物は、高いガラス転移温度(Tg)を持ち、優れた電気絶縁性、機械的特性、耐熱安定性を持っています。また、アミン化合物と比べて安全性が高く、電気・電子絶縁材料分野で最も一般的に使われる硬化剤となっています。

エポキシ樹脂同士の自己重合

エポキシ樹脂同士の自己重合には、塩基性または酸性触媒を用いる方法がありますが、一般的に、イミダゾール類などの塩基性触媒を用いたアニオン重合がよく行われます。他の硬化剤とは異なり、わずかな量の触媒を添加するだけでエポキシ樹脂を硬化させることができます。さらに、120℃〜150℃の比較的低い温度下では、硬化が迅速に進むことで、高いガラス転移温度(Tg)の硬化物が生成されます。

まとめ

本記事では、エポキシ樹脂の特徴や種類、反応メカニズムなどを解説しました。

高性能な特性を持つエポキシ樹脂は、他の素材と組み合わせることで高機能な製品を生み出すことができます。エポキシ樹脂はまさに裏方として活躍し、製品の性能向上に大きく貢献しているプラスチック素材と言えるでしょう。

株式会社CrowdChemが公開した「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」では、”エポキシ樹脂にカテゴライズされる製品のカタログ情報” や “その製品と紐づいた特許情報” を含む、化学分野に関する知見や知識を提供しています。

一部は無料でご利用いただけますのでぜひご活用ください。

「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」の無料トライアルはこちらから。株式会社CrowdChemについて詳しくはこちらから。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

目次
閉じる