本記事では、シリカについて解説します。
物性や取り扱い、安全性など幅広く紹介するため、本記事を読むだけでシリカの情報を網羅することができます。
シリカとは
シリカとは二酸化ケイ素(SiO2)の慣用名※です。地球上の地殻や稲などの植物、プランクトンの中に含まれています。また、工業的にも量産されており、日常生活にも頻繁に登場します。もともとの成分である二酸化ケイ素は、化学的に安定で、地球上に豊富に存在し、安価であることから様々な用途で使用されています。
※慣用名:慣用名とは、広く一般的に呼ばれている化学物質の呼称です。対して、定められた規則に基づいて体系的に命名する方法をIUPAC命名法と言います。例えば、一般に“酢酸”といわれているCH3COOHは、慣用名です。IUPAC名称は、ethanoic acid (エタン酸)です。
シリカの種類
シリカは、大きく「結晶シリカ」と「非結晶シリカ」に分けられます。結晶性シリカとは、分子の配列に規則性のある構造を有しており、主に天然界に多く存在しています。他方、非結晶シリカは、アモルファスシリカとも言われ、結晶性を示さず多くは人工的に合成されています。
シリカの使用用途
結晶性シリカは、ガラス、陶器、セラミック、レンガ及び人工石のような製品に使用されており、アメジストや水晶などの宝石も広い意味での結晶性シリカです。
非結晶シリカは、濾過助剤として飲料分野、食品分野で酵母菌などの不要物をろ過する際に使用されたり、乾燥剤(シリカゲル)として使用されたりします。
その他、塗料や断熱材、医薬、化粧品、農薬などに広い用途があります。
シリカの物性
シリカの化学特性を下記の表にまとめました。結晶、非結晶どちらも常温で固体、融点が極めて高い特徴があります。また、化学的安定性が高く、水分子と結合しやすい性質により乾燥剤としての利用がよく知られています。
物理化学的特性 | 結晶性シリカ | 非晶性シリカ |
数値 | ||
形状 | 固体 (20℃、1気圧) | 固体 (20℃、1気圧) |
色 | 無色~白色 | 青白色~灰色 |
pH | — | 4~9 |
融点・凝固点 | 1,610℃(融点) | 1,710℃ |
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 2,230℃(沸点) | 2,230℃ |
燃焼又は爆発範囲 | 不燃性 | 不燃性 |
蒸気圧 | 0 mmHg (20℃) | ほぼ0 |
比重(相対密度) | — | 2.1 |
溶解度 | 水:不溶 | 水:合成非晶質シリカ :約15~68 mg/L (20℃, pH 5.5~6.6) |
安全データシート(結晶質シリカ(石英))
シリカの安全性
非晶質シリカにおける健康被害については情報がなく、結晶性シリカと比較して安全とされています。他方、結晶性シリカは、国際がん研究機関(IARC)等による試験により、明らかな発がん性との相関が認められており、注意が必要です。シリカを取り扱うことになった方は、下記の“シリカの取り扱い”の章をしっかり読んで対応しておく必要があります。
シリカの取扱い方法
シリカの粉塵が発生する場所においては、密閉された装置、機器または局所換気装置(ドラフト)の使用が求められます。また、必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用し、直接手に触れる場合には保護手袋、眼に入る可能性がある場合には保護眼鏡やゴーグル、皮膚及び身体に触れる場合には保護衣・保護エプロン等を着用しなければいけません。特に結晶性シリカの場合、発がん性を示すことから、作業場に換気装置を設置するなどより厳格な管理が必要です。
シリカを製造している主なメーカー
シリカを製造している主な国内メーカーは次のとおりです。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。
企業名 | 主な製品名 | 用途 |
水澤化学工業株式会社 | ミズカシル™ | 塗料・インキ用艶消し剤、製紙用薬剤 |
株式会社トクヤマ | レオロシール® | 流動化・固結防止、補強充填剤など |
三菱ケミカル株式会社 | 三菱合成石英 | 半導体、光ファイバー |
株式会社アドマテックス | 高純度合成球状「シリカ」 | 封止材料用フィラー、プリント基板用フィラー |
まとめ
シリカは、化学的に安定で自然界に多量に存在し、工業的にも量産できます。また、安価に入手が可能なため、多様な用途で使用されています。ただ、結晶性シリカは発がん性を有するとされ、人体に長期間・多量に暴露(触れたり、吸入したりすること)すると、健康被害を生じる可能性があり取り扱いには細心の注意が必要です。
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代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。