原料探索をもっと効率化したいと考えたことはありませんか?必要な原料に対し、カタログを取り寄せて探すのは手間も時間もかかりますよね。
そんな中、データベースを使った原料探索が注目を集めています。データベースを使うことで、物性など必要な条件に応じてピンポイントで原料を検索でき原料探索の手間が大きく削減されるのです。
この記事では化学業界向けの包括的なデータベースを提供しているCrowdChemが、原料探索におけるデータベースの動向や具体的な活用法を解説します。弊社のCrowdChem Data Platformを使った検索手順もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
材料研究者が直面する原料探索の課題
新素材を開発するとき、原料探索は避けて通れない重要なステップです。しかし、実は原料を探し、取り寄せることは非常に手間のかかる作業でもあります。
まず、材料メーカーはそれぞれ独自の製品ラインナップを持っているため、必要な原料情報を得るには多くのカタログを取り寄せる必要があります。メーカーに個別に連絡してカタログを請求するのは大変な手間ですし、届くまでに時間がかかることもあります。手持ちのカタログで調べていると、最新情報に更新されておらず、再度問い合わせることになるというケースも少なくありません。
加えて、メーカーごとに独自の製品名を使用しているため、同じ化学物質でも異なる名称で販売されていることがよくあります。例えば、クラレの「クラレボパール」と三菱ケミカルの「ゴーセノール」は同じポリビニルアルコールですが、製品名は全く違います。カタログや通常のWeb検索だけでどの物質がどの製品名に対応しているか完全に把握するのは困難です。
また新素材開発の際、原料の融点や引張強度など物性値を基に検索をしたい場面も多くあります。しかし、メーカーによって物性データの表示フォーマットが異なるため、一つ一つ手作業で比較する必要があり、非常に時間がかかるのです。
これらの課題を解決するべく、各社の情報を落とし込んだデータベースの活用が注目されています。
データベースの活用による原料探索の革新
前述の通り、原料探索はとても手間がかかる一筋縄ではいかない作業です。しかし、データベースを活用することで、これらの問題を一挙に解決し、原料探索を大幅に効率化することが可能になります。メーカー情報の一括比較やAIを活用した新材料発見など、データベースならではの機能が材料研究の幅を大きく広げてくれるのです。
ここから、データベース活用がもたらす具体的な効果と可能性について詳しくご説明します。
カタログ収集からデータベース活用へ
カタログを用いた原料探索は日本の材料研究者にとって馴染み深い方法ですが、デジタル技術の進歩により、世界ではより効率的な方法がとられています。すでに原料探索を効率化し精度を向上させるためのデータベースサービスが多く登場し、多くの研究者たちに活用されているのです。
例えば、米国では化学材料に特化したマーケットプレイスであるKnowdeや、化学情報の包括的なデータベースであるCAS SciFinder Discovery Platform、さらに材料特性のデータベースであるMatWebなどが、研究者や技術者の作業をサポートしています。このうちKnowdeは比較的新しいものの、SciFinderやMatWebは10年以上の歴史を持つサービスです。
米国では原料探索をはじめ、材料化学のありとあらゆる局面でこのようなデジタルデータベースの利用が主流となっています。データベースを使って瞬時に求める情報にアクセスしたり、複数メーカーの商品を一度に比較できるようになれば、研究の効率も大きく向上するでしょう。
データベース活用で叶う新たな可能性
データベースの活用は、単に原料探索の効率を上げるだけではありません。世界の研究開発の現場では、データベースを利用することで研究の幅を大きく広げています。
例えば、大量のデータを分析することで、これまで気づかれていなかった新しい材料の組み合わせや用途が発見されています。また、AIを活用したデータ解析と予測機能を備えたサービスも増えており、特定の物性値を持つ材料の予測や既存材料の新しい用途の提案もできるようになりました。
このような先進的なアプローチにより、従来の試行錯誤的な研究方法から、より系統的で効率的な研究開発へと転換が進んでいます。世界中の研究機関や企業がこうしたデータベースサービスを積極的に活用し、研究開発のスピードと質を向上させているのです。
データベースを活用することで、新しい材料の発見や既存材料の新たな用途開発など、研究の可能性を大きく広げることができます。こうした効率的な研究アプローチは、材料科学の発展に大きく貢献する可能性を秘めています。
では、実際の研究現場でデータベースをどのように活用できるのでしょうか。ここからは、弊社が提供しているCrowdChem Data Platformを例に、具体的な原料探索の方法や活用事例をご紹介します。
多角的に原料を探せるCrowdChem Data Platform
弊社のCrowdChem Data Platformは、化学分野におけるデータ解析および共有を支援するデータベースです。国内外の化学メーカーの製品情報を集約し、一元的に検索・閲覧できる機能を有しており、化学反応や材料特性を予測して新しい化学物質の発見などをサポートします。
原料探索においては、膨大なデータから物質名や製品名で検索できるのはもちろん、物性値や構造式による高度な検索も可能です。これまで原料探索に欠かせなかったカタログの取り寄せなどの手間は一切なく、ピンポイントで欲しい情報を手にすることができます。
ここからはCrowdChem Data Platformの活用法について、具体的な手順を示しながらご紹介していきましょう。
物質名しかわからず製品名や販売元を知りたい
新素材の開発において、ある特定の物質が含まれる製品や販売元の情報をすべて確認し、比較したいものです。カタログでこのような情報をすべて網羅するのは非常に大変な作業ですが、CrowdChem Data Platformなら物質名から関連する製品を一気に検索し、それぞれの製品の特徴や販売元を効率的に把握することができます。
では、CrowdChem Data Platformを使って、物質名から製品を検索する具体的な手順を見ていきましょう。下記手順では一例として「トリシクロデカンジメタノールジアクリレート」を検索しています。
- CrowdChem Data Platformにアクセスし、「製品データベース」をクリック
- 画面左側の絞り込み欄から「物質」のプラスボタンをクリック
- 物質名の入力欄に検索したい物質名(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を入力し、「絞り込み」をクリック
- 候補の物質が表示されたら、目的の物質を選択して「追加」をクリック
- 製品データベースの物質欄に選択した物質名が追加されたことを確認し、再度「絞り込み」をクリック
- 指定した物質を含む製品一覧が表示されるため、製品名をクリックして詳細情報を確認
このように、CrowdChem Data Platformを使えば、物質名から製品情報まで簡単に辿り着くことができます。簡単な手順で、同じ物質を含む複数の製品を一括表示して比較できるため、原料探索の大幅な効率化が実現するのです。
求める条件に合う物性から製品を探したい
新素材開発において、特定の物性値を持つ製品を探すことになる場面は多くあります。しかし、物性値はメーカーによって物性データの表示フォーマットが異なるため、比較が難しいのが現状です。
CrowdChem Data Platformでは、これらの表示フォーマットを統一し、情報を一括管理しているため、効率的に検索することができます。
それでは、「接着剤用途で曲げ弾性率が1.5Mpa以上の製品が必要」という場面を想定し、物性値検索を行ってみましょう。具体的な手順は以下の通りです。
- CrowdChem Data Platformにアクセスし、「製品データベース」をクリック
- 物性名のプルダウンから曲げ弾性率を選択し、測定値の範囲を入力し、「絞り込み」をクリック
- 条件に合う製品の一覧が表示されるため、製品名をクリックして詳細情報を確認
このようにCrowdChem Data Platformを用いて、求める物性値を持つ製品を効率的に見つけ出すことができます。さらに、曲げ弾性率に加えて耐熱温度も指定するなど、複数の物性値を組み合わせて検索することも可能です。
CrowdChem Data Platformは、物性値に基づく原料探索の手間を大幅に省けるだけでなく、条件に合う製品を漏れなく見つけ出せるため、材料選定の精度向上にもつながるのです。
効率的な原料探索が研究を加速させる
CrowdChem Data Platformを活用すれば、製品カタログを取り寄せることなく、物質名や物性値から即座に最適な製品を見つけられ、原料探索の効率が大幅に向上します。さらに、調べたい原料に関連する特許情報も同時に検索でき、AIによって類似構造や代替物質へ代替したときの物性値の解析も可能です。データベースを使って得られた幅広い情報は、新たな研究アイデアの創出や、より広範な材料選択につながります。
革新的な研究の第一歩は、効率的な情報収集から始まります。CrowdChem Data Platformで、研究の可能性を広げてみませんか。
※一部機能は無料でご利用いただけます。