マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を使った新素材開発の流れを詳しく解説!実用化に立ちはだかる課題とは?

新素材開発の効率化と迅速化は、材料開発分野の研究者にとって大きな課題です。マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用してこの課題を解決したいと期待を寄せる研究者も多いのではないでしょうか。

とはいえ、MIを導入しても思うような結果が出ないことがあるのもまた事実です。MIを成功に導くには、データ収集や人材確保といったMIの課題も把握することが不可欠と言えます。

この記事では、化学とデータサイエンスに精通した人材を有するCrowdChemが、MIを用いた新素材開発の流れを詳しく解説するとともに、MI導入時の課題と解決策をご紹介します。

目次

材料研究者なら知っておきたいMIの可能性

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは、材料科学とデータ科学を融合させた新しい技術領域です。MIでは、材料に関する膨大なデータを活用し、機械学習モデルで予測を行うことで、以下のような効果を期待できます。

  • 新素材開発期間の大幅な短縮
  • 実験コストの大幅な削減

これらのメリットは、材料開発の現場に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

ここからは、MIがもたらす2つの大きなメリットについて、より詳しく解説していきます。

データを活用して新素材開発期間を短縮

MIでは機械学習モデルを使った予測により、膨大な実験データから特徴量を抽出し、有望な原材料候補を効率的に絞り込むことを可能にします。これにより、実験回数を大幅に減らすことができるのです。

実際にMIを導入した結果、三菱ガス化学では新素材開発の期間を30~50%短縮できたことが確認されています。研究者の時間とリソースを最適化し、開発業務を加速させることで、従来の手法では見落とされがちだった画期的な新材料の発見につながるかもしれません。

材料や実験にかかるコストを削減

MIのもうひとつの大きなメリットは、実験にかかるコストの削減です。機械学習モデルによる材料特性の予測は、実際の実験を行うよりもはるかに低コストで実現できます。

実験に必要な材料や人件費などのコストを抑えられるため、開発費用を最大30%節約できたという事例もあります。

限られた予算の中で最大限の成果を追求したい材料開発の現場において、MIは大きな可能性を秘めているのです。

新素材開発に向けたMIプロジェクトの流れ

MIが新素材開発の効率化と迅速化に役立つとはわかっていても「実際の業務でどのように活用すればいいのかイメージできない」という方は少なくありません。

MIプロジェクトを成功に導くには、データ収集から機械学習モデルの構築、実験検証まで、一連の流れを理解し、各ステップで押さえるべきポイントを把握することが不可欠です。

ここからは、MIプロジェクトの一般的な流れを4つのステップに分け、各ステップの役割と重要性を詳しく解説していきます。ぜひご自分が必要とする新素材開発と照らし合わせながら読み進めてみてください。

①プロジェクトの土台を築くデータ収集

MIプロジェクトの第一歩は、質の高いデータを収集することです。既存のデータを整理し、プロジェクトに活用できるように加工することが重要となります。

さらに、新たな実験を行ってデータを取得したり、計算科学的手法を用いて仮想的なデータを生成したりすることで、データ量を増やし、分析の精度を高めていきます。

ただし収集したデータの中には、欠損値や異常値が含まれていることがあり、すべて使えるとは限りません。そのため、データのクレンジングとチェックが不可欠です。

②新素材の特性を予測する機械学習モデルの構築

収集したデータをもとに、プロジェクトの目的に合った機械学習の手法を選定し、新素材の特性を予測するモデルを構築します。

このモデルを使って予測を実行し、有望な新素材の候補を絞り込んでいくことが可能です。

③実験結果のフィードバックによるモデルの改良

予測モデルによって絞り込まれた有望な新素材の候補について、最小限の実験で検証を行います。ここでの目的は、予測モデルの精度を評価し、改良するためのデータを効率的に収集することです。実験で得られた結果と予測結果を比較し、モデルの精度を評価します。この評価結果を機械学習モデルにフィードバックし、モデルを改良していくことが、より正確な新素材の特性予測につながります。このプロセスにより、実験回数を大幅に削減しつつ、新素材開発に必要な高精度な予測モデルを構築していくことができるのです。

④予測モデルで絞り込んだ新素材候補の実験検証

改良された予測モデルを使ってさらに絞り込んだ有望な新素材候補を、実際に実験で検証します。実験で得られた新たなデータは、既存のデータセットに追加しましょう。追加されたデータを用いて、機械学習モデルの再学習を行い、予測精度のさらなる向上を図ることができます。

MIプロジェクトは、これらのステップを繰り返し、新素材開発の効率化と迅速化を実現していきます。MIの実用化において材料研究の場では解決の難しい課題があることも事実です。次の章ではMIプロジェクトを進める上で知っておくべき課題について、解説していきましょう。

MI活用において化学メーカーが直面する課題

MIは新素材開発に大きな可能性をもたらす一方で、その導入には克服すべき課題も存在します。化学メーカーがMIを活用する際には、以下のような問題が立ちはだかることが少なくありません。

  • データの収集と膨大なデータ整理の壁
  • 化学もデータサイエンスも扱える人材の確保

これらの課題を乗り越えることは容易ではありませんが、MIの実用化に向けて避けては通れない道のりです。ここからは、化学メーカーがMIを導入する際に直面する課題について、解決策も合わせて詳しく解説していきます。

データの収集と膨大なデータ整理の壁

MIプロジェクトを成功に導くためには、質の高いデータを大量に収集し、整理することが不可欠です。しかし、社内に散在するデータを一つにまとめ、分析に適した形に加工するには多大な時間と労力を要しますし、このように労力を割いて自社のデータをかき集めたとしても、データ数が到底足らなかったという話もよく聞かれます。さらに、データを集めるだけでなく品質を確保するためのクレンジングや検証作業も欠かせません。データ管理には膨大な工数を要するため、化学メーカーの中だけで行おうとすると本業に支障をきたしてしまいます。

自社でデータに関する業務を行う見通しが経たない場合には外部リソースをに頼るのも一手です。MIを導入する際にまず問題となる自社のデータ不足も外部リソースが収集したデータを活用することで解決できる可能性があります。無理なくスムーズにMI実用化に進めるだけでなく、今後データ管理を自社で賄っていく未来を見据えて、委託先の専門家からデータ収集・整理・管理のノウハウを取り入れることも可能です。

化学もデータサイエンスも扱える人材の必要性

先ほど説明したデータ管理の重要性からもわかる通り、MIプロジェクトを推進するには化学とデータサイエンスの両分野に精通した人材が不可欠です。しかし、化学メーカーには化学の専門家は豊富にいる一方で、データサイエンスのスキルを持つ人材が不足しています。課題解決のアプローチとしては、社内でのデータサイエンス人材の育成と、外部リソースの活用の両方が考えられます。

社内人材の育成は、社内の業務や課題に精通した人材を長期的な視点で育成できるため、社内の情報セキュリティを維持しやすいなどのメリットがありますが、人材育成に時間とコストがかかり、短期的な課題解決には時間がかかってしまいます。

一方、外部リソースの活用は、即戦力となる専門人材の確保や、最新のデータサイエンス技術の導入しやすいのがメリットと言えます。社内の業務知識やノウハウの蓄積が難しく、情報セキュリティのリスク管理が重要になるものの適切な管理とコミュニケーションを行うことで、これらの課題を克服することは可能です。

企業の状況や課題に応じて、社内人材の育成と外部リソースの活用のバランスを取ることが重要です。例えば、長期的な視点でデータサイエンス人材を育成しつつ、短期的な課題解決のために外部リソースを活用するといった方法が考えられます。適切な外部リソースの使用は専門家のノウハウを社内に取り込み、人材育成を加速させることにもつながるでしょう。

CrowdChemのMI人材が課題解決をサポート

化学メーカーがMIを導入する際には、データ管理の難しさや人材不足などの課題があり、外部リソースの活用はその有効な解決策です。

CrowdChemは、特許や論文、製品カタログからデータを収集し、MI導入に必要な質の高いデータセットの構築しています。これらの豊富なデータは、機械学習モデルの精度向上に直結し、求める結果に大きく貢献するでしょう。

また、CrowdChemには、化学とデータサイエンスの両分野に精通した専門家が在籍しています。化学メーカー特有の課題を深く理解し、MIプロジェクトの成功に必要な知識と経験を持ち合わせた専門家集団は、お客様のMIに関してサポートすることが可能です。

MIの実用化をご検討の際は、ぜひCrowdChemにご相談ください。

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