「ポリアミド」とは?似ているプラスチック「ポリエステル」との違いや特徴を解説

私たちの生活において、数多くの種類のプラスチックが使用されています。その中で、ポリアミドは衣料品や自動車部品、電気部品など、多くの製品に幅広く使用されるプラスチックです。本記事では、ポリアミドの特徴や種類、似ているプラスチックとの違いなどを解説いたします。

目次

ポリアミド(ナイロン)とは何か?

ポリアミド(ナイロン)(※以下ポリアミド)とは、PAと略されるプラスチックの一種です。ナイロンと言われると、聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか?

ポリアミドは、1935年にアメリカのデュポン社によって開発され、馴染みのあるナイロンという名前は、同会社が発売しているポリアミドの商品名です。 参照:経済産業省 政策について ケミカル・ワンダータウン

発売当初は世界初の合成繊維として使用され、現在では自動車部品、電気部品、食品包装材などの製品に使用されています。

ポリアミド(ナイロン)の種類

よく使用されている代表的なポリアミドには複数種類があり、それぞれ違う特性を持っています。以下、代表的なポリアミドをご紹介します。

・ナイロン6.6

ナイロン6.6はポリアミドの中で、最も有名で多くの場面で使用されています。世界初の合成繊維で、衣類や電子機器のパーツ類、カーペットなどのインテリア製品、カバン、専用糸や弦などの分野で使用されています。

耐久力や防食性、耐熱性などの物性に優れており、ナイロン6.6はナイロン6に比べて染色性が劣る点から、ナイロン6が多く使用されています。このポリアミドは、自動車産業、次いで電子製品に最も使用されています。

・ナイロン11とナイロン12

ナイロン11と12は、上記ナイロン6、6.6よりも耐寒衝撃性を強化したものです。耐久性や耐衝撃性に優れており、融点や吸水性が低く、形状変化がない素材です。これらも自動車産業や航空宇宙産業で使用されています。 

・パラ系アラミド

アラミドとは、全芳香族ポリアミドとも呼ばれ、ナイロンよりも強度、耐熱性に優れています。

パラ系アラミドとメタ系アラミドの2種類があり、パラ系アラミドは鋼鉄に比べて5倍の強度、耐摩耗性、耐熱性があることから、様々な素材の代替素材としてよく使用されます。

主に建築素材や、光ファイバーのケーブル、防弾チョッキ・ヘルメットなどの軍事用品にも使用されています。

・メタ系アラミド

メタ系アラミドは、耐熱性と防炎性を強化した素材です。主にバグフィルター(排ガス中のダストを集塵するための濾過装置)や宇宙服、消防服に使用されています。

ポリアミド(ナイロン)の特徴

ポリアミドは約80年前から使用されている比較的古いプラスチック素材ですが、数多くのプラスチック素材の中でも、非常に優れた特性を持つ素材です。靭性や耐摩耗性に優れている点が、代表的な特徴です。

耐摩耗性の点において、綿と比較しても約10倍の強度と優れた染色性があることから、衣類製品に使用されています。またナイロンはプラスチックの中で融点が高く、耐熱性が優れていることから、プラスチック素材の熱に弱いという弱点も克服できます。

薬品やガソリンなどの油にも、耐性があり、優れた耐久性を備えています。

・ナイロン

ナイロンの物性は以下の通りです。

靱性対摩擦性は綿の10倍、耐靱性、ひっぱり強度に優れる
耐熱性高い融点、ナイロン6の融点225℃、ナイロン6.6の融点265℃
耐摩耗性表面が固く、高い耐摩耗性
耐油性・耐薬品性結晶性が高く耐薬品耐油性に優れている、酸に対する耐性は綿の100倍
耐衝撃性給水によって耐衝撃性や柔軟性が高まる
食品衛生性食品衛生法に対応
強化可能性ガラス繊維などのその他素材で機械的特性を強化可能

・アラミド

アラミドの物性は以下の通りです。

靱性鋼鉄の5倍のひっぱり強度
強度と摩耗性強度と摩耗性がハサミなどでは切れないほど非常に高い
耐熱性融点が320℃のアラミドもある、優れた耐熱性がある

ポリアミドとポリエステルの違い

ポリアミドとポリエステルは同じ合成繊維のため、混同しやすい素材です。しかし、その特性はそれぞれ異なっています。例えば、吸水性の観点では、吸水性や吸湿性はポリアミドの方が高く、速乾性はポリエステルの方が優れています。

また耐摩耗性は、ポリアミドの耐摩耗性、耐衝撃性は他の合成繊維を含めても圧倒的に高い耐性を持っています。ポリエステルも耐摩耗性は高い素材ですが、ポリアミドには及びません。ナイロンはひっぱる力、ポリエステルは衝撃に強い特性を持ちます。

同じ合成繊維ですが、その他の観点においても、異なる特性を持っています。それぞれの特性を理解した上で、使用しましょう。

ポリアミドはどのようなものに使用されているのか

ポリアミドは発売当初はストッキングの素材として使用され、衣料品の合成繊維としての使用方法が一般的でした。

しかし先述した通り、ナイロン6や6.6、アラミドなど種類のポリアミドが開発されたことによって、衣料品に限らず、自動車部品や電気部品、食品フィルム、カバンなどの製品が使用されるようになりました。

ポリアミドが使用される主な製品

ポリアミドの特性を活かし、使用されている代表的な製品は以下の通りです。

衣類の合成繊維

特性機械的強度、耐摩耗特性、染色性
用途衣類の合成繊維

ポリアミドは、機械的強度、耐摩耗特性に加え、染色性が良く、デザイン性に優れています。

・ファスナー

特性機械的強度、耐摩耗性、軽量、染色性
用途ファスナー

ファスナーは、スライダー、エレメント(務歯)、テープによって構成されています。スライダーを上下させてエレメントを繋ぎ止めるのがファスナーの役割です。

スライダーやエレメントは金属で作られているのもありますが、ポリアミドのファスナーのメリットは、機械的強度、耐摩耗性、軽量であることです。また染色性がいいことから衣類や鞄など、商品のデザインに溶け込ませて装着できます。

・自動車部品

特性耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性
用途自動車部品

ポリアミドは、その耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性からエンジンルームの部品や燃料系の部品に使用されています。

・電気部品

特性絶縁性、耐熱性
用途電気製品

電子機器を安全に使用するためポリアミドのもつ絶縁性は大きなメリットです。また、発熱を伴う電子部品にはポリアミドのもつ耐熱性は大きな特長です。

・レトルト食品の梱包材

特性耐熱性と耐衝撃性
用途レトルト食品の梱包材

一般家庭用のレトルト食品の包装材は、多重構造になっており、通常はPET、アルミ箔、ポリプロピレンなどが使用されます。しかしながら業務用の大型のレトルト食品には、耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えたポリアミドの層を追加してより強度を高める場合があります。

・釣り糸

特性機械的強度、耐摩耗特性、柔軟性、伸縮性
用途釣り糸

ポリアミドは、機械的強度、耐摩耗特性に加え、適度な柔軟性と伸縮性があり、リールにスムーズに収まるので釣り糸としての必要機能を満たしています。

・スポーツ用カバン

特性耐摩耗性、耐久性、軽量、染色性、速乾性
用途スポーツ用カバン

スポーツ用のカバンを使用する上で外せない機能は強さと軽さです。ポリアミドは、耐摩耗性、耐久性の観点から衝撃などの負荷のかかりやすいスポーツ系のカバンに適しています。

さらに、ポリエステルなどの素材に対して軽量であることはスポーツ用カバンの素材として大きなアドバンテージとなります。また、染色性の良さから多様なデザインに仕上げることができ、速乾性があることもスポーツ用のカバンに適した特長です。

・カーテンや玄関マットなどのインテリア

特性染色性、耐摩耗性、機械的強度、防虫・防カビ効果付与
用途カーテンや玄関マットなどのインテリア

室内装飾品のカーテンや玄関マットには意匠性が求められます。そこでポリアミド素材のカーテンや玄関マットは様々に染色できるメリットがあります。また洗濯時にかかる負荷に対し、ポリアミドの持つ耐摩耗性や機械的強度は有効です。

さらに、防虫・防カビ効果を付与できるのも室内用のインテリアに適しています。

ポリアミドの製造メーカー

最後にポリアミドを製造する国内メーカーを紹介します。

メーカー名製品カテゴリー
旭化成株式会社ナイロン66、レオナ™シリーズ
UBE株式会社ナイロン6
株式会社クラレジェネスタ(ポリアミド9T)
東レ株式会社アラミン™シリーズ、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610,共重合ナイロン
東レ・デュポン株式会社パラ系アラミド繊維、ケブラー®︎
帝人株式会社パラ系アラミド、トワロン®︎、テクノーラ®︎
東洋紡株式会社グラマイド®︎

まとめ

ポリアミドは、プラスチック素材の中でも、日常生活においてもよく使用され、使用分野が広い素材です。ポリアミドの中でも、種類があり、それぞれ特性が異なることを理解しておきましょう。

株式会社CrowdChemが公開した「CrowdChem Data Platform(クラウドケムデータプラットフォーム)」ではポリアミドに関する製品のカタログ情報や、その製品と紐づいた特許情報を含む、化学分野に関する知見や知識を提供しています。

一部は無料でご利用いただけますのでぜひご利用ください。

「CrowdChem Data Platform(クラウドケムデータプラットフォーム)」の無料トライアルはこちらから。

株式会社CrowdChemについて詳しくはこちらから。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

目次
閉じる