界面活性剤の選び方。基本的な構造、主な用途、種類、作用について徹底解説

本記事では、同じ分子内に水になじむ親水基と油になじむ疎水基を両方併せ持つ特殊な物質、界面活性剤について詳しく解説します。構造、用途、種類、作用、メーカーについての紹介を通し、界面活性剤についての理解を深めましょう。

目次

界面活性剤とは

界面活性剤とは液体と固体、液体と気体、固体と気体、または液体同士であっても水と油のような異なる物が接してるときの境界(界面といいます)の性質を変える物質の総称です。

界面活性剤の構造

界面活性剤の構造は、下の図のように親水基と疎水基が一分子中に結合した構造をしています。

引用:日本界面活性剤工業会

界面活性剤の用途

界面活性剤のもっとも有名な用途は洗剤です。衣服、食器、床、浴槽、トイレなどの水回りの洗浄には界面活性剤が活躍しています。またシャンプーや石鹸、ボディソープなど身体を洗う時も界面活性剤が欠かせません。さらにプラスチック帯電防止、潤滑油添加剤、防錆剤(さび止め剤)、塗料用の添加剤など工業用途でも多くの界面活性剤が使われています。

界面活性剤の種類

界面活性剤は1分子中に親水基と疎水基をあわせもつ構造をしていますので、その組み合わせにより様々存在します。一般的に親水基の性質により4つの種類に分類されています。

アニオン性界面活性剤

親水基が水と触れた時に電離して陰イオンになる界面活性剤です。泡立ちが良く、高温でも活性を失いません。洗浄剤の他、乳化剤や分散剤として使用されます。純石けん分(脂肪酸ナトリウム)、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウムなどが相当します。

ノニオン界面活性剤

親水基水自体にイオン性のない構造をもつ界面活性剤です。そこそこの洗浄力があり、乳化・分散力が強いことから衣料用洗剤としてよく使用されています。

ただ、高温になると活性が低下し、洗浄力が低下する傾向があります。また、起泡性もやや低めです。しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが相当します。

両性界面活性剤

親水基が水と触れた時に陰、陽イオンどちらにもなり得る構造をもつ界面活性剤です。刺激性が低く、ボディソープなどによく使用されます。

単独では洗浄性が高くないものの、他の界面活性剤と併用しやすく、洗浄性や泡立ちの低さは大きな問題にはなりません。アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが相当します。

カチオン性界面活性剤

親水基が水と触れた時に電離して陽イオンになる界面活性剤です。洗浄性はさほど高くありませんが、物質の界面に吸着しやすく、帯電防止効果や殺菌効果をします。

アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩化物などが相当します。

界面活性剤の作用

ある種の界面活性剤を水と油の共存する系に添加すると油の表面に界面活性剤が取り巻くことで油が小さな粒子状に分散します。この現象を乳化(エマルジョン化)と言います。物理化学的には油の界面エネルギー(界面張力)が低下したことにより生じた現象です。

出典:日本化粧品工業会 水と油が混じり合う「乳化」技術より抜粋

一般的に界面エネルギーが大きいと界面を小さくしようとする力が働きます。乳化は油の界面エネルギーが界面活性剤によって小さくなった結果生じ、油滴状に分散して界面が広がっても安定化するのです。衣服が洗濯される理由は、繊維に吸着した油汚れの界面エネルギーが洗剤によって小さくなり、洗浄液中に分散しやすくなるから油汚れが落ちるのです。

界面活性剤を製造しているメーカー

界面活性剤を製造している主な国内メーカーは、以下のとおりです。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
花王株式会社アニオン:エマールシリーズ、ネオぺレックスシリーズカチオン:アセタミンシリーズノニオン:エマルゲンシリーズ両性:アンヒトール
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社アニオン:ライポンノニオン:レオックス、レオコールシリーズ
三洋化成工業株式会社アニオン:ビューライトシリーズノニオン:ニューポールシリーズ
第一工業製薬株式会社アニオン:アクアロンシリーズノニオン:ノイゲンシリーズ

まとめ

界面活性剤は性質の異なる物の界面のエネルギーを変える働きをする物質の総称です。親水基と疎水基が同一分子に存在する構造が特徴です。界面活性剤は、洗浄、分散、起泡などの作用を起こします。

主な用途は洗剤ですが、帯電防止剤や柔軟剤、防錆剤、塗料の添加剤など色々な所に使用されています。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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