本記事では、温度の変化により、液体状態と固体状態を可逆的に行き来する性質をもつ熱可塑性樹脂について解説します。用途、種類、構造、特徴など幅広く紹介するため、本記事を読むだけで熱可塑性樹脂の情報を網羅することができます。
熱可塑性樹脂とは
熱可塑性樹脂とは温度の変化により、液体状態と固体状態を可逆的に行き来する性質をもつプラスチック樹脂のことです。また、加熱により一度固体化するともう元には戻らないプラスチック樹脂を熱硬化性樹脂といいます。
※熱硬化性樹脂についての解説記事はこちら。
熱可塑性樹脂の用途
熱可塑性樹脂は、日常のプラスチックのあらゆるところに使用されています。例えば、ペットボトル・ビニール袋、アクリル板、食器、シャンプーやリンスのボトル、プラスチックバケツ、さらには自動車や医療機器などの産業用にも使用されます。
熱可塑性樹脂の種類
熱可塑性樹脂は、汎用プラスチックと呼ばれるものと、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものに分けられます。さらにエンジニアリングプラスチックは汎用エンプラ、スーパーエンプラに分けられます。
汎用プラスチック、汎用エンプラ、スーパーエンプラそれぞれに結晶性のものと非結晶性のものとがあり、合計6種類に分類できます。
熱可塑性樹脂の種類と具体例
結晶性 | 非結晶性 | |
汎用プラスチック | ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、 | ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル ・スチレン樹脂(AS)、アクリル樹脂(PMMA) |
汎用エンジニアリングプラスチック | ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE) | ポリカーボネート(PC) |
スーパーエンジニアリングプラスチック | ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂 | ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSU)ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI) |
熱可塑性樹脂の構造
熱可塑性樹脂は、単一もしくは複数のモノマーが連結したポリマーであり、モノマーは、エチレンやプロピレン、エチレングリコール 、テレフタル酸、アクリル酸など多くの種類が利用されます。熱可塑性樹脂の場合、ポリマー分子同士はお互いに化学的な結合がありません。従って、流動性を示しやすいのです。
熱可塑性樹脂の特徴
熱可塑性樹脂の最大の特徴は、温度によって固体状態⇔ガラス状態⇔ゴム状態⇔液体状態を行き来することです。ゴム状態からガラス状態に変化する温度をガラス転移点といいます。ガラス転移点を有する物質には熱可塑性樹脂の他に、天然ゴム、ケイ酸塩のガラスがあります。熱可塑性樹脂は、成形時間が短く済み、比較的低コストで生産できる、リサイクルしやすいなどのメリットがある反面、耐熱性、硬度が低く、耐薬品性が弱いというデメリットもあります。
熱可塑性樹脂を製造しているメーカー
熱可塑性樹脂を製造している主な国内メーカーは下記です。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。
企業名 | 主な製品名 |
三井化学株式会社 | オーラム® |
東レ株式会社 | トレカ™ |
三菱ケミカル株式会社 | ゼラス™ |
東ソー株式会社 | ミラクトランPシリーズ・Eシリーズ |
日本ゼオン株式会社 | クインタックシリーズ |
まとめ
熱可塑性樹脂とは、熱を加えると固体から液化への状態変化を起こし、冷却するともとの固体に変わる性質をもつプラスチック樹脂のことです。汎用プラスチック、汎用エンジニアプラスチック、スーパープラスチックに分類され、日常品にあるペットボトル、食器、シャンプー、リンスのボトル、プラスチックバケツ、さらには自動車や医療機器などに使用されています。
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代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。