【ポリエステルとは?】原料や特性、用途など詳しく解説

ポリエステルは、主鎖にエステル結合を有する有機高分子です。衣服や飲料ボトル、包装フィルムに使用されています。本記事ではポリエステルの用途、構造、原料、特性、メーカーなど幅広く解説します。

目次

ポリエステルとは

ポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるような主鎖にエステル結合※を有する有機高分子です。

一般的には分子中に複数のヒドロキシ基(-OH)が存在する多価アルコールと複数のカルボキシ基(-OCOCH3)が存在する多価カルボン酸が脱水縮合することで得られます。

多価アルコールと多価カルボン酸の組み合わせを選ぶことで様々なポリエステルが合成できます。

※エステル結合:R−COO−R′の結合部分、【−COO−】のこと

ポリエステルの歴史

ポリエステルが世界で初めて開発されたのはナイロン(ポリアミド)より少し歴史が新しい1941年のことです。当時イギリスのキャリコプリンターズ社により『テリレン』というブランド名で発売されました。

後にデュポン社が工業化に成功し本格的に世に広まります。国内においては、1957年に東レと帝人が共同で英国のICI社の技術協力を得て量産化され、ユニチカ、東洋紡、旭化成、三菱レイヨン、クラレなども参入しました。

参照:繊維製品の歴史, 発明協会, 日本化学繊維協会

ポリエステルの用途

ポリエステルの用途は、繊維と成形品に大別されます。繊維に使用されるポリエステルはPET繊維(ポリエチレンテレフタレート)、PEN繊維(ポリエチレンナフタレート)などがあります。これらは強度が高く、染色性も良好で、吸湿性、吸水性が低いため乾きやすくスポーツウェアなどに使用されています。

一方、成形品に使用されるポリエステルにはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンナフタレート(PEN)があります。PBTは熱可塑性エンジニアプラスチックとして電気・電子機器に使用されたり、自動車など部品、アイロンやシャワーヘッドの筐体に使用されたりしています。PENはガスバリア性、紫外線バリア性が高いことから包装用フィルムによく使用されています。

ポリエステルの原料

ポリエステルの原料は、多価アルコールと多価カルボン酸です。組み合わせにより様々なポリエステルが得られます。

ポリエステル名多価アルコール多価カルボン酸
ポリエチレンテレフタレート(PET)エチレングリコールテレフタル酸
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)1,3プロパンジオールテレフタル酸
ポリブチレンテレフタレート(PBT)1,4-ブタンジオールテレフタル酸
ポリエチレンナフタレート(PEN)エチレングリコールナフタレン2,6-ジカルボン酸ジメチルエステル
グリプタル樹脂グリセリン無水フタル酸
ポリ乳酸乳酸乳酸

ポリエステルの構造

ポリエステルは多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体の総称です。代表的なポリエステルの化学構造としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を以下に示します。

出典:PETボトルリサイクル推進協議会 PET樹脂の特性

上図の化学構造において、多価カルボン酸がテレフタレート、ポリアルコールがエチレングリコールです。

テレフタル酸

エチレングリコール

ポリエステルの反応メカニズム

ポリエステルの合成反応は、多価カルボン酸の官能基である(-COOH)とポリアルコールの官能基である(-OH)の脱水縮合です。ポリエステルの工業的量産は溶融重縮合法が一般的です。

具体的には多価カルボン酸とポリアルコールの融点以上の温度下、金属塩などの触媒を使用して製造します。反応時間と共に分子量が増加しますが、ある時間以上反応させると分解が生じ逆に分子量が小さくなるので製造時には時間管理が重要になります。その他固相重合反応、共重縮合などの方法もあります。

生分解性ポリエステルについて

ポリエステルに使用される原料(多価アルコールや多価カルボン酸)は石油系であることが多く、高分子として樹脂化されると分解されにくくなる問題点が指摘されています。

たとえば、近年ニュースになることの多い海洋プラスチック問題は、海洋に流れ着いた石油系ポリエステル樹脂が原因のひとつです。

そこで、とうもろこしの様な植物由来原料を使用し、樹脂化しても容易に微生物によって分解される「生分解性プラスチック」が注目されています。生分解性プラスチックは、光合成により得られるサスティナブル素材であることも大きなメリットです。

なかでも生分解性ポリエステルのポリ乳酸は、すでに実用化が進んでおり、ラミネート紙コップ、ストロー、食品包装フィルム、食器などに使用されています。

特に、農業用の生分解性マルチシートは、収穫が終わった後にそのまま土壌にすき込めば勝手に分解してくれます。このことにより農家の人にとってマルチシートを回収する重労働から解放されたばかりか、マルチシートが環境に残存するリスクも防ぐことができるのです。

ポリエステルを製造しているメーカー

ポリエステルを製造している主な国内メーカーは下記です。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名主な製品名
株式会社クラレクラペット
東レ株式会社トレコン™
三菱ケミカル株式会社ノバデュラン™
ユニチカ株式会社テラマック®

まとめ

ポリエステルとは主鎖にエステル結合を有する有機高分子です。繊維状に加工して衣料に使用されたり、成型品として飲料ボトル、電気・電子製品、自動車部品、アイロンの筐体などに使用されたりしています。石油から製造されるポリエステルは分解されにくく海洋プラスチックごみ問題を引き起こします。

この問題の解決には、ポリ乳酸に代表される生分解性ポリエステルが有力とされています。ただ石油系から置き換わるにはコストに課題があり、今後の技術開発が望まれます。

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