エポキシ樹脂の概要
エポキシ樹脂はエンジニアリングプラスチック(強度や耐熱性に優れるプラスチック)の一種であり、エポキシ基に由来する化学反応を起こして固化するタイプの樹脂です。詳細はこちらをご参照ください。
プリント基板樹脂開発の難しさ
電子部品のプリント基板では、耐熱性や絶縁性の向上が求められています。
シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂を組み合わせた硬化性樹脂組成物がよく用いられますが、少なくとも4種類の硬化反応過程が存在し、最適な樹脂成分やその添加量の組み合わせを見出すためには時間と工数がかかります。
プリント基板の樹脂に求められる物性
耐熱性や絶縁性の評価指標となるガラス転移温度(Tg)や低誘電率は、エポキシ樹脂の構造特性ゆえ相反することが知られています。プリント基盤の樹脂は、このトレードオフの両物性を満たす必要があります。
AI製品探索を用いた最適材料の提案
株式会社CrowdChemが提供している「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」を活用して、プリント基盤の樹脂に最適なエポキシ樹脂を探索してみましょう。今回は「AI製品探索」という機能を用います。
まず、エポキシ樹脂とアネートエステル樹脂を組み合わせた硬化性樹脂組成物についての特許(WO2004029127)を選定しました。この特許の実施例Xに配合されたエポキシ樹脂を、他の製品に変更して物性を予測します。
結果は、実施例Xで使用されていたノボラック型エポキシ樹脂(NC-3000S-H)を低弾性骨格エポキシ樹脂(YL-7410)へ変更することで、Tgを高く、誘電率を低くする組成を提案することに成功しました。
(参考)予測結果
特許(WO2004029127)に記載の実施例をオレンジ、AI製品探索にて実施例Xのエポキシ樹脂を変更した場合の予測値をみどりで示しています。エポキシ樹脂の製品(材料)を変更した組成で、Tgと誘電率を予測いたしました。
耐熱性と絶縁性の両方が優れた目標領域の製品のうち、特にYL-7410を使用することで高性能な組成を見出すことができました。
まとめ
本記事では、ブリント基板樹脂の開発における最適なエポキシ樹脂の選定について解説いたしました。
当社で開発した「AI製品探索」機能を利用し、最適なエポキシ樹脂の製品を見つけ出すことに成功しました。研究員の勘や経験に依存することなく、解析が可能です。よって、研究開発の属人化解消や現場での工数削減が期待できます。
本記事における記載事項は当社での解析結果であり、その完全性、正確性、適用性、有用性等に関し、当社はいかなる責任も負いません。
株式会社CrowdChemが公開した「CrowdChem Data Platform(クラウドケム データ プラットフォーム)」では、”エポキシ樹脂にカテゴライズされる製品のカタログ情報” や “その製品と紐づいた特許情報” を含む、化学分野に関する知見や知識を提供しています。一部は無料でご利用いただけますのでぜひご活用ください。
代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。