【難燃剤とは?】種類、メカニズム、規制、メーカーについて解説

本記事では、プラスチックやゴム、紙製品の発火や燃焼を抑制する難燃剤について解説します。種類、メカニズム、法規制など幅広く紹介するため、本記事を読むだけで難燃剤の情報を網羅することができます。

目次

難燃剤とは

難燃剤とは、プラスチック・ゴム・繊維・紙・木材などの燃えやすい素材に使用して、その発火を遅らせ、燃焼の拡大を阻止する化学物質のことです。建物の壁の断熱材、乗用車の内装、電気機器の樹脂部分や家庭内のカーテン、絨毯などに使用されています。

難燃剤の種類

難燃剤はその成分によって有機系、無機系があります。

<成分による分類と代表的な難燃物質>

成分系統物質名
有機難燃剤ハロゲン系テトラブロモビスフェノールAデカブロモジフェニルエーテル塩素化パラフィントリブロモフェノールパークロロシクロペンタデカン臭素化ポリスチレンテトラクロロ無フタル酸クロレンド酸
リン系リン酸トリフェニルポリリン酸アンモニウムホスファゼン系トリスジクロロプロピルホスフェート9,10- ジヒドロ -9- オキサ -10-      フォスファフェナントレン -10- オキシド
無機系難燃剤金属水酸化物系水酸化アルミニウム水酸化マグネシウム
アンチモン系三酸化アンチモン
その他無機系ホウ酸亜鉛窒素化グアジニン

難燃化のメカニズム

難燃剤のメカニズムを、ものが燃える現象の説明から順を追って解説します。

ものが燃えるとは

ものが燃える時は「可燃物」「酸素」「熱」の三要素が必要です。これらが同時に存在する環境においてものが燃えます。まず可燃物と酸素が熱により活性化し、可燃物の化学組成が酸素と反応して別の化学物質に変化します。変化後の代表的な物質は二酸化酸素と水です。例えば、可燃物が二酸化酸素や水に変化する場合、多量の熱を放出します。この熱が新たな熱源となり、まだ燃えていない可燃物にも燃え広がるのです。

難燃剤の役割

可燃物が燃焼により別の物質に変化する時、「中間体」が発生します。この中間体は極めて不安定で一瞬で別の物質に変化します。この中間体のことを「活性ラジカル」と呼びます。難燃剤は、この活性ラジカルを補足して燃焼の連鎖を断ち切る役割を行います。

三酸化アンチモンの場合

代表的な難燃剤、三酸化アンチモンの難燃メカニズムについて解説します。三酸化アンチモンは、単独では難燃効果はほとんどなくハロゲン系難燃剤と併用されることで難燃効果を発現します。三酸化アンチモンはハロゲン系化合物と反応してSbO3やSbOxを生成します。この物質が、燃焼途中の中間体「活性ラジカル」と反応し酸素と可燃物との反応を阻害するのです。

難燃剤の規制

一部の臭素系難燃剤は廃棄後に焼却される際、ダイオキシンが発生することから法律で制限されているので注意が必要です。例えば、PBDE(テトラ、ペンタ、ヘキサ及びヘプタブロモジフェニルエーテル)やPBB(ヘキサブロモビフェニル)は、2009年のPOPs条約において「廃絶」が勧告され、今はもう国内で流通していません。現在は環境への影響が少ないリン系や窒素系難燃剤へ切り替わりつつあります。ただ、TBBPA(テトラブロモビスフェノールA)などいくつかの臭素系難燃剤は、例外的に規制対象外となっています。人の健康や環境に深刻な影響を与える可能性のあるという疑いは晴れていませんので、今後の規制の動きに注意する必要があります。

難燃剤を製造しているメーカー

難燃剤を製造している主な国内メーカーは下記です。様々な用途に、様々なグレードの製品が製造・販売されています。詳細は各社のウェブサイトをご参照下さい。

企業名取扱い難燃剤
阪本薬品工業株式会社臭素化エポキシ系SR-Tシリーズ
マナック株式会社ポリマー型臭素系
ランクセス株式会社リン系難燃剤ディスフラモール®
第一工業製薬株式会社臭素系、リン系ピロガード®
三井化学ファイン株式会社ホスファゼン系難燃剤ラビトル®
帝人株式会社臭素系難燃剤ファイヤガード®
丸菱油化工業株式会社ノンネンシリーズ
東ソー株式会社フレームカット®

まとめ

難燃剤とは、燃えやすい素材に含まれ、発火を遅らせたり、燃焼の拡大を阻止したりする化学物質のことです。家庭内やオフィスの様々な備品や自動車の内装などに使用されています。難燃剤はその成分によって有機系、無機系がありますが、一部の臭素系難燃剤は環境に悪影響を与える懸念から、法律で制限されているので注意が必要です。

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記事監修者

池端 久貴のアバター 池端 久貴 代表取締役

代表取締役 池端 久貴
化学メーカーで営業、半導体装置メーカーでマーケティングの経験を経て、総合研究大学院でマテリアルズ・インフォマティクスを研究。その後、統計科学博士を取得し、旭化成(株)でマテリアルズ・インフォマティクスや自然言語処理技術活用の推進に従事。2022年に(株)CrowdChemを創業。

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